薬剤師が解説「食欲を抑える」養生法・ツボ・漢方薬 「蓄える季節」にこそ試したい東洋医学の知恵

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1年を通してみると、春夏は活動的に動き回るので少しやせ、秋冬はあまり動かなくなるので少し太ります。体重が増えたことを気にされる方もいるでしょうが、心身のどこにも不調を感じることがなく、日常生活を送れていれば、それがその人のベストな体型です。

ただし、前述したように秋は食欲が増すのが自然ですが、栄養のため込みすぎは秋バテの原因にもなります。体調を崩すことにもなりかねませんので、注意が必要です。

10月下旬から立冬(11月7日)までは、「秋の土用」の時期にあたります。季節の変わり目である土用は体調を崩しやすいのですが、特に秋の土用は「陽」の夏から「陰」の秋に大きく変化するため、それに対応する体は想像以上にエネルギーを消費しています。

特に今年は夏が暑くて長く、秋が急にやってきたため、体への負担は大きかったといえます。

秋の土用は「腎(じん)」が弱りがちです。 食べすぎによって消化不良を起こすと腎が弱り、滞った老廃物が再吸収されて、太ったりむくんだりしやすいです。

太るだけではなく、たまった老廃物のせいで、「いつも疲れている」といった秋バテにつながりやすくもなります。腎はまた冷えに弱いので、体を冷やすとブヨブヨとした感じの太り方をしたり、腰痛などをはじめとする「腎虚(じんきょ)」の症状にもつながったります。実際、このところギックリ腰や坐骨神経痛で来院する患者さんが急増しています。

食欲の爆発を抑えるポイント

では、秋の食欲を適切な状態にコントロールするには、どうすればいいのでしょうか?

それは「食べたい」という気持ちを無理に抑えるよりも、適度な食欲に収まるように生活習慣を見直すことが大切です。そこで、食欲を安定させるためにすぐ実行できることをいくつか紹介させていただきます。

●十分な睡眠をとる

秋の夜長で、夜更かしをしがちな方も多いのではないでしょうか。

睡眠不足になると、食欲を抑えるホルモンバランスが乱れ、必要以上に「食べたい」と感じるようになり、たくさん食べないと満足できない状態になります。食欲を安定させるためには、朝、目覚ましなしで自然に目覚めるくらいの睡眠時間を確保できるといいでしょう。

また、睡眠をしっかりとって夜の「陰」の気を十分に取り込むことで、体の潤いが保たれます。 潤いが不足すると体が乾燥して胃が活動的になり、異常な食欲を生む結果になります。

良質な睡眠は食欲のコントロールだけでなく、体調が整い、風邪をはじめとする感染症にもかかりにくくなります。

●温かいもの、体を潤すものを食べる

秋の土用は胃腸を温める食材を摂り、体の内部を整えます。

旬のさつまいもや里芋、山芋、ごぼう、れんこん、きのこ、ブロッコリー、カリフラワーなどを積極的に摂りましょう。サンマやイワシ、サバなどの魚もおいしい季節です。こうした魚は良質の脂を含み、腹持ちもいいため、おすすめです。

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