薬剤師が解説「食欲を抑える」養生法・ツボ・漢方薬 「蓄える季節」にこそ試したい東洋医学の知恵

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●ストレスをためない

過剰なストレスは、自律神経の交感神経を優位にさせます。交感神経が優位だと胃腸の働きが抑えられる反面、エネルギーの消費量が増えるため摂食欲求が高まります。そうすると、「たいしてお腹は空いていないのに食べたい」という状況が起こりやすくなります。

また、脳は長期間ストレスにさらされると情報伝達機能が低下して、「食べないほうがいいとわかっていても食べてしまう」「十分に食べたのにもっと食べたい」といった状況が起こりやすくなります。

ストレスはため込みすぎず、こまめに解消しましょう。ストレス解消や自分へのご褒美は、食べ物以外にする習慣にするといいですね。好きな香りの入浴剤やハーブティー、好きな場所への散歩などがおすすめです。

食欲を抑えるツボ2つ

●ツボ

それでも湧いてきてしまう食欲を抑えたいときは、「胃腸点」のツボ押しが効果的。ゆっくりと押しもむとよいでしょう。胸やけや腹部膨満感があるときにも有効です。

暴飲暴食による便秘が気になるときは、胃腸の働きを高め、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にする「足三里」を刺激しましょう。こちらはお灸もおすすめです。

食欲を抑えるツボ2つ。左が「胃腸点」右が「足三里」(イラスト左:にしやひさ/イラスト右:ナミッコ/PIXTA)

食欲が乱れているときはお腹が冷えていることも多いので、カイロや湯たんぽ、温かいペットボトルでおへそ中心に温めるのも効果的です。

●食べすぎを抑える漢方薬

食べすぎ防止には、漢方薬もおすすめです。

胃の働きが活発になりすぎると、すぐにお腹が空いてしまったり、過食になったりします。これは胃熱(胃に熱がこもった状態)なので「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」などの胃熱を取る処方を使います。

ストレスが原因の食べすぎには、柴胡(さいこ)剤が効くことがあります。柴胡はストレスが原因の過剰な胃腸の働きを抑え、自律神経やホルモンバランスを整えて、ストレスによる過食を軽減する効果があります。

柴胡剤には「大柴胡湯(だいさいことう)」「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」などがありますので、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談して、選んでもらうといいでしょう。

平地 治美 薬剤師、鍼灸師。 和光鍼灸治療院・漢方薬局代表

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ひらぢ はるみ / Harumi Hiraji

千葉大学医学部非常勤講師、日本東洋医学会代議員。朝日カルチャーセンター、津田沼カルチャーセンターなどで漢方関連の講座を担当。明治薬科大学薬学部卒業後、漢方薬局勤務を経て、東洋鍼灸専門学校に入学。漢方治療の大家である寺師睦宗氏に漢方を、石原克己氏に鍼灸を、クリシュナU.K氏にアーユルヴェーダ医学を学ぶ。著書に『げきポカ』(ダイヤモンド社)、『舌を見る・動かす・食べるで健康になる』(日貿出版)など。You tube「平地治美・漢方チャンネル」も開設。ブログ「平地治美の漢方ブログ」。

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