ここのところ、急な気温の変化による体調不良を訴える患者さんが増えてきています。1日のなかで10℃以上の気温の変化がある日などは、頭痛やめまいなどの症状を訴える患者さんが急増しました。
漢方は医学部教育にも組み込まれている
このような気温や気圧の変化が原因の症状は、近年、“気象病”として認識されつつありますが、実は3000年以上前に書かれた「黄帝内経(こうていだいけい)」という医学書にも、随所に記載されています。
かつては冷遇された歴史のある漢方ですが、現在では医学部の教育にも組み込まれていて、従来の西洋医学では治療のむずかしい、さまざまな“不定愁訴”と呼ばれる不調に対して効果を発揮します。
気温差によって起こる自律神経のトラブルは、病院での診察や血液検査でははっきりとした原因が見つからないことが多く、このような症状に対しては、まさに漢方の出番といえるでしょう。
それでは、気温や気圧の変化が体に与える影響について、漢方的な視点で説明させていただきたいと思います。
漢方では、すべての生命活動は「気」によって行われると考えています。気とは体のすべての活動の原動力とされていて、車に例えるとエンジンのようなものといえるでしょう。気のなかでも、最前線で私たちの体を防御している気を特に「衛気(えき)」といい、ウイルスなどの病原体や気温変化などから守ってくれています。
衛気は、毛穴の開閉による温度調整にも関わっています。暑ければ毛穴を開いて汗を出して熱を逃し、寒ければ毛穴を閉じて熱が奪われないようにしてくれます。寒暖差が大きいと、そのたびに調整をしなければなりません。それが気の消耗につながり、結果的に普段以上に疲れやすくなります。
後述しますが、気は作ることができます。しかし、作られる以上に消耗してしまえば、気は不足します。そして、気の不足は疲労だけでなく、さまざまなトラブルにつながります。
気が不足することを漢方では「気虚(ききょ)」といいます。虚という字は、漢方では不足することを意味します。気虚の代表的な症状には以下のようなものがあります。
気虚になるのは、作られる気の量が足りないか、消耗する気の量が多すぎるか、あるいはその両方です。気を充実させるためには、しっかりと気を作り、さらにそれを無駄に消耗しないことが重要となります。
では、まず気がどのように生成されるかについて説明したいと思います。
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