けんすう:以前は電通に入れば「電通の人」という確固たるアイデンティティーがあったのに「そんなの会社の看板を借りているだけだよね。自分自身はどうなの?」って問われ始めたわけですよね。
その結果、大学生の悩みの大半が「やりたいことが見つかりません」になってしまったんです。
若者が「夢」を持ちにくい時代
つんく♂:夢や憧れが小さくなっているのもありますよね。
僕らの子ども時代は、ミュージシャンになれば一攫千金の可能性があったんです。
1980年代後半のバンドブームのときでさえ、ユニコーンやJUN SKY WALKER(S)といった当時の超人気バンドに憧れて、この世界に飛び込んだバンドマンも多かったはず。
でも、いまはミュージシャンを目指したところで、食べていけるか、稼げるかどうかもわからない。
YouTubeで100万回再生したところでたかがしれています。
一時的にちやほやされても、お金がついてこない。夢を持ちにくいんですよ。
「勝ちパターン」が増えすぎて、目指すものがわからない
けんすう:たしかに、ロールモデルがなくて目指すものもよくわからない時代ですね。
つんく♂:ただ、HIKAKINのような新しい形の超成功者もいるし、「フォロワー〇万人のインフルエンサー」のような、身近な憧れみたいな人も出てきましたね。
ひと昔前ならラジオのハガキ職人や有名企業の名刺をいっぱい持ってるサークルの部長、少し前なら売れっ子読モ(読者モデル)みたいなものかな。
これまでにない新しい勝ち組も出てきて、若者たちは何が正解かわからなくて、焦って、迷っているんだろうなと思うんです。
けんすうさんも言うように、昔はいい会社に入るとか、ミュージシャンになるとか、わかりやすいゴールがあったけれど……。
けんすう:本当にそうですよね。勝ちパターンみたいなものが増えすぎて、目指すゴールがわからない。
しかも、お金持ちになっても「お金だけが幸せじゃないよ」とか言われちゃったりするわけです。1億円持っている人よりも、家族や仕事、趣味に打ち込んでいる人のほうが幸せに見えたりもする時代です。