大学を卒業し、情報工学系研究科の修士課程を終えた田内さんは、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社します。以後退職まで16年間金利のトレーダーを続け、現在は「社会的金融教育家」として、講演や執筆活動などを通して社会とお金の関連性を伝える活動をしています。
「子どもの頃にお金で苦労する人生を送ってきたおかげで、お金を扱う仕事をするうちに、社会全体でお金の役割を考えるようになったんです。みんなお金を増やそうとしますが、実はお金は移動しているだけ。
投資というと、株を10万円で買って20万円で売って儲けることを考えますが、そうやって儲けたお金の裏には、株を10万円で売らされて、20万円で買わされる人が存在します。配当や金利の分は、世の中のお金が増えているというのも誤解です。配当や金利も会社から人へのお金の移動です。
全体のお金は増えもしないし、減りもしない。大事なのは、お金をどのように流して、暮らし向きをよくするかです。失われた30年といわれますが、30年前に比べたら相当便利になっている。教育の情報格差だって、スマホやインターネットのおかげで減っているはずです」
お金はあくまでも目的ではなく、道具
「ところが、僕らが『生活の豊かさ』について考えるとき、お金を軸で考えてしまうから過去よりも所得が減ったと悲観してしまう。多くの人はお金中心にものごとを考えるくせがついている。お金を貯めること自体が人生の目的になってしまって『年収が高いから』という理由で就職先を決めてしまうことも多いですよね。
本来は『何が自分をやりたいのか、どう社会と関わっていきたいのか』を考えないといけないと思うんです。僕もそうですが、お金を勉強する機会ってほとんどありませんでした。多くの人がお金のために働き、お金に感謝する。年収が高ければ偉いと思い、貯金が多いと幸せだと感じる。いつのまにかお金の奴隷になってしまうんです。
そこで、お金の勉強をしようと思っても、投資や節約術の話になる。結局、お金にふりまわされていることには変わりないんですよね。
お金は目的ではなく、あくまで道具なんです。僕が若い頃知っておきたかった、お金という道具の使い方を伝えたくてお金の教育を始め、この小説を書きました」
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