もちろん、現実の店舗運営はこんなにも単純な話ではない。飲食店には必ず混雑時間とアイドルタイムがあるし、1日トータルで考えても、「240杯も出る店はそうそうない」というツッコミが来ることも筆者自身想定している。また、良心的な価格のラーメン店を否定するつもりもない。
筆者がここで言いたいのは、「客席回転数から脱却することで、異なる経営戦略の景色が見えてくる」という考え方だ。
そういう意味では、「とみ田」は今後のラーメン業界の未来を変える可能性を示してくれている。「とみ田」のような、ゆっくり時間をかけて食べられる至高のラーメン。これこそが「2000円の壁」を超えられるお店なのだろう。
ほかには、神奈川の温泉地・湯河原にある名店「らぁ麺 飯田商店」もそういったお店の1つ。首都圏にあるお店でないにもかかわらず、ラーメン一杯で全国からお客を集める人気店だ。
その理由は、ゆっくりと温泉宿に一泊してから「飯田商店」のラーメンを食べるという「旅の一過程」として楽しむ人が多く訪れること。旅先だと、財布のひもは緩みやすい。オフィス街にあるラーメン店で、短い昼休憩の中で食べるラーメンとは、消費者の気持ちが変わってくるのも自然なことだろう。
何より肝心な「ものすごく美味しい」こと
こういった流れの中で、高価格帯に乗せるべく、おしゃれでゆったりとした空間を演出したラーメン店も増えてきているが、何より肝心なのが「ものすごく美味しい」こと。
「ものすごく美味しい」ということが何よりもの感動を生む。「とみ田」や「飯田商店」の店内はもちろん清潔感があり、しっかりとしたしつらえだが、過度な演出はなく無駄な緊張感もない。とにかくゆったりと「ものすごく美味しい」一杯が食べられるということが価値なのである。
これからラーメンの価格の二極化、三極化が進む中で、「とみ田」や「飯田商店」で過ごす1時間というのは、大きなヒントになるだろう。
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