「逆境に強い人」と「逆境に弱い人」の決定的な違い ストレスフルな現代を生きるヒント「首尾一貫感覚」

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強制収容所での過酷な体験や大災害などは、当事者にとっては「想定外」の出来事です。普段は「把握可能感」が高い人であっても、想定外の事態に遭遇すると、見通しのつかない未来に不安になります。もともと「処理可能感」が高い人であっても、「なんとかなる」と思える根拠が見当たらなくなるのかもしれません。

そんなときにネガティブな事態を「意味があるもの」ととらえる「有意味感」を持つことができれば、前を向くことができます。私は、この有意味感が首尾一貫感覚のベースになるものだと思っています。

『夜と霧』から学ぶ首尾一貫感覚

首尾一貫感覚が高い人とはどのような人なのか。それは伝記やノンフィクションからも読み取ることができます。参考になるのは、ユダヤ人強制収容所の様子を書いたヴィクトール・E・フランクル(1905〜1997)の『夜と霧』(池田香代子訳、みすず書房)です。被収容者であったフランクル氏は、精神科医であり、心理学者でもありました。それゆえ、被収容者たちがどのようにして精神を崩壊させていったのか、一方で過酷な状況に対峙し、精神を保っていたのか、心理学や精神医学の立場から分析しました。

首尾一貫感覚を提唱したアントノフスキー博士も、フランクル氏の研究から「影響を受けた」と著書に書いています(※2)。

フランクル氏は、「どんな人生にも意味がある」という言葉で知られている心理療法、ロゴセラピーの創始者でもあります。ロゴセラピーは、「生きていることに意味があるのか」「普通に生活できているのにどこか虚しい」といった〝人生の意味〞への取り組みを、側面から支えます(※3)。

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