(第63回)貿易収支はこれから大きく悪化する

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(第63回)貿易収支はこれから大きく悪化する

貿易統計の速報によれば、3月の貿易収支黒字は前年同月比で78・9%の減少となった。輸出が2・2%減、輸入が11・9%増なので、収支を悪化させた主たる原因は、輸出の減少ではなく輸入の増加である。これは資源価格が高騰したためである。実際、原油の輸入は数量では6・6%減少したのに、輸入額は14・8%増となっている(つまり、価格が23%程度上がっているわけである)。輸出の減少は、いうまでもなく東日本大震災による生産活動の停止・減少の影響だ(自動車が27・8%減、半導体が6・9%減などとなっている)。

輸出の減少と輸入の増加というこの傾向は、今後、さらに拡大するだろう。事実、3月11日以降だけを見れば、輸出は前年同月比で9・7%減となっている。今後、火力発電増強の影響で、LNG(液化天然ガス)や原油の輸入が増加するだろう。大震災の影響は、3月の貿易収支にはまだ完全には表れていない。

では、その影響が表れる4月の貿易収支は、どのような姿になるだろうか? これに関する一つの試算を左ページの表に示した。

まず、3月下旬の輸出の落ち込み率を参照して、4月の輸出額が昨年4月より9・7%落ち込むと仮定すれば、5兆3184億円となる(表の(1))。

他方で、火力発電への代替によって、原油の輸入量が増加するだろう。どの程度増加するかを見極めがたいので、ここでは前年と同量としよう(つまり、3月に比べれば増加するわけである)。そして、価格が3月と同水準、すなわち対前年3月比で23%上昇するとしよう。そして、他の輸入額が今年の3月と変わらないと仮定する。すると、4月の輸入総額は5兆8493億円となる(表の(2))。したがって、貿易収支は5109億円の赤字となる(表の(5))。

 

 

 

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