(第62回)迫る炎に油を注ぐ愚 インフレに金融緩和

(第62回)迫る炎に油を注ぐ愚 インフレに金融緩和

日本が大震災と原発事故への対処に忙殺されている間に、世界経済が大きく変わっていた。インフレ圧力の高まりである。震災前から進んでいた原油価格、金価格、食料品価格の高騰は、まったく収まっていない。これに対応して、欧米諸国は金融引き締めに舵を切った。

世界的物価上昇の影響は、すでに日本の統計にも表れている。3月の輸入物価指数は、契約通貨ベース対前年同月比で19・2%上昇した。為替レートは1年前より円高になっているので、円ベースでの上昇率は9・4%になっている。しかし、大震災後に円安が進んでいるので、4月には円ベースでも2ケタの上昇率になる可能性が高い。

原油価格の上昇は、2008年にも起きたことだ。この時は国内の消費者物価指数の上昇率が年率2%を超えた(下グラフ参照)。これからも同じことが起きるだろう。国内の消費者物価は今後、必ず上昇する。

欧米各国の金利が上昇するとの期待から、為替レートは円安に進んだ。日本の株式市場はこれを好感して株価の下落が止まったのだが、それは輸出の増加や輸出関連企業の利益の増加を期待してのものだろう。

しかし、輸出は増加するだろうか? もちろんそんなことはない。いうまでもなく、震災によって生産設備が損傷したからだ。今後も電力制約があるので、生産設備が修復されても生産を回復できない。今年夏は、東日本の電力需要を25%カットしなければならないので、東日本での生産は7~8月の2カ月間、ほぼ同率だけ減少する。これはサプライチェーンを通じて西日本の生産をも制約する。つまり、輸入インフレの圧力が強まる中で、円安が進み、生産が拡大しないのだ。円安は輸出の増加をもたらさず、原材料コストを引き上げ、輸出関連企業の利益を圧迫するだろう。


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