中小企業と外部の後継者をマッチングする新潮流 経営希望者が出資を得て経営したい会社を買収

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フレスコを引き継ぐことになったのは岡部祐太氏。10代のころからプロ経営者を志し、コンサルタント会社などで働いた後にサーチャーとしてサーチファンドの運営会社に登録した。登録会社の紹介でフレスコとマッチングした岡部氏は業界の構造やフレスコの置かれた状況を詳しく分析し、今後の経営方針について阿久津氏に説明。その精緻さに阿久津氏も驚いたという。

2023年2月には事業承継に関する契約を行い、岡部氏が社長に就任した。岡部氏が所属するJapan Search Fund Accelerator(JaSFA)などが出資する投資事業組合がフレスコの第三者割当増資を引き受ける形で出資した。阿久津氏も株式を持ち続け、会長として社内に残ることになった。

経営者として会社の全責任を引き受ける立場から解放され、阿久津氏にとっても新たな楽しみが見つかったという。これまで忙しくて十分に行くことができなかった建設現場を回ることができるようになり、作業する職人と深く議論できるようになった。「もともと私は職人上がり。現場改善のために働くことができるのはうれしい」と話す。

フレスコの阿久津文和会長(左)は岡部祐太氏(右)に社長職を譲った後、現場に顔を出す機会が増えたという(記者撮影)

飛び込みで承継先に40ページ超の提案書

サーチファンドという仕組みは経営者を目指す若手にとってもベンチャー起業とは違う「もう一つの方法」になっている。2023年1月に神奈川県を中心に訪問介護事業を展開するメディプラスの事業を承継し社長となった松本竜馬氏は「ゼロから事業を立ち上げるのではなく、すでにある企業を大きくする活動をしてみたかった」と語る。

松本氏の会社探しは独特だった。興味のあった在宅の医療介護領域で活動する会社を国会図書館などで調べ上げ、代表電話にアポなしで電話。当時の社長に事業承継したいと直談判したのだ。前職の三菱商事時代に培った企業投資の知識を生かし、40ページにも及ぶ提案書を持参した。ちょうど承継先を探していた前社長もその熱意に押されて話し合いがトントン拍子に進んだという。

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