中小企業と外部の後継者をマッチングする新潮流 経営希望者が出資を得て経営したい会社を買収

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「M&Aで会社を手放してしまうと、30年間育てた会社が完全に自分の手から離れてしまうのではと思った。これからも会社の成長を遠目で見ていたいのに寂しい」

千葉県で建売住宅を建設・販売するフレスコの創業者、阿久津文和氏はそう語る。1993年に創業した会社は30年の間に年商が100億円を超えるまでに成長。従業員は170人程度に達した。一時は大手のフランチャイズ傘下に入ったこともあったが、数年で解消。自主経営を重視し地道に会社を成長させてきた自負がある。

阿久津氏は60歳を超えた頃から「いつまでも自分が経営し続けることはできない」と意識し始めた。本当は会社をもっと何倍にも大きくしたいが、自らの力だけで大規模な資金調達や買収といった思い切った成長戦略を実行することもできない。そんな悩みも抱えていた。

取引先の銀行などからM&Aの案件を提案されたことは幾度となくあった。ただ、自らが立ち上げた会社との関係が切れてしまうことを考えると、どうしても一歩踏み出すことができなかった。

経営者が出資を受けながら経営したい会社を買収

転機が訪れたのは、2022年6月。それまでつきあいのあった野村證券の担当者経由で「サーチファンド」という事業承継の形式を聞いた。

サーチファンドとは、経営者を目指す若手(サーチャー)が投資家の出資を得ながら自らが経営したい会社を探し、買収する仕組みだ。事業を受け渡す経営者にとっては、後継者と承継後の経営方針を事前に話し合ってから売却することができるというメリットがある。阿久津氏はこの仕組みを聞いた際に「これしかない」と直感した。

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