日本の安全保障政策の新たな手段「OSA」とは何か 他国軍隊への「無償資金協力枠組み」創設の意義

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これまでも、途上国軍隊に対する安全保障面での協力には、教育訓練・助言を行う能力構築支援、自衛隊の中古装備品を供与する不用装備品無償譲渡があった。OSAは、物品やインフラの供与を対象とする点でソフト面での支援である能力構築支援とは異なり、また、資金協力枠組みである点で不用装備品譲渡とも異なる。

OSAに対しては、対外政策の新たな手段として期待が寄せられる一方、武力紛争への介入につながるおそれや、適正管理の実効性への懸念も提起されている。また、現在見直しが進んでいる防衛装備移転三原則の下で殺傷能力のある武器の輸出が認められた場合、OSAにおいても同様の供与が認められるのではないかとの批判もある。

ただし、OSAは従来政策として確立してこなかったツールであり、これらの批判も、いまだ行っていないことへの懸念という側面が強い。一方、「小さく産んで大きく育てるべき」との肯定的な声もあるが、小さく産んだ結果、成果が生まれなければ、画餅に終わる可能性がある。

しかし、その意義を論じるためには、経験がない中での仮定に基づく懸念や期待ではなく、他国の事例も参照し具体的にその可能性と限界を論じる必要があろう。

安全保障援助における「取り込み」と「抑止」

この観点から、武器の供与を対外政策の手段として活用してきたアメリカの事例から得られる示唆はあるだろうか。

第2次大戦後、アメリカの対外政策においては、対外有償援助(FMS)や対外軍事資金(FMF)を通じた武器供与や訓練提供、軍事的助言を内容とする「安全保障援助」と呼ばれる枠組みが重要な役割を担ってきた。援助の目的は時期によって変遷しているが、そこでは、被援助国の「取り込み」と、脅威に対する「抑止」という2つの側面が存在してきた。

すなわち、援助を通じて味方を増やすという意義と、被援助国の能力強化を通じ、自国と被援助国にとって共通の脅威となりうる国に対する抑止力を補完・強化するという意義が共存してきたといえる。

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