「君たちはどう生きるか」"NO宣伝戦略"の成功理由 事前情報のなさが生み出した新鮮な感動体験

✎ 1〜 ✎ 66 ✎ 67 ✎ 68 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

思えば私が、スタジオジブリ作品を初めて観たのは2002年の5月4日、場所は広島。カープ対タイガースを広島市民球場(当時)で観る予定が、雨天中止になったので、しょうがなく『千と千尋の神隠し』を観た。前年公開だったが、特大ヒットとなりロングラン上映中だったのだ。

打ちのめされた。もちろん内容が圧倒的だったのだが、野球の試合が雨天中止で「しょうがなく」観たので、事前情報がまったくなかったことも、新鮮なインパクトに拍車をかけたと思う。独特の抽象性と映像インパクトで押してくるスタジオジブリ作品には、特に「NO宣伝戦略」が合うのではないか。

『君たちはどう生きるか』をまだ観ていない方に

最後にNHKの公式サイトに掲載されていた「謎に包まれたジブリの新作 鈴木敏夫Pに聞いた!」(2023年7月6日)という記事を引用したい。ここまで私は何度も「NO宣伝戦略」という言葉を使ってきたのだが。

――インタビューのなかで、今回の「宣伝戦略」について質問すると、鈴木さんは「あまり戦略って言葉は好きじゃない」と答える場面がありました。そしてインタビュー終了後、鈴木さんは改めて「揚げ足を取るようで悪いんだけど」と笑顔で前置きしながら、「戦略は戦争で使う言葉で、そうなると勝ち負けになってしまう。そういうことじゃないんだ」と話してくれました。

『君たちはどう生きるか』をまだ観ていない方は、この言葉だけを唯一の事前情報として携えながら、観に行くのもいいかもしれない。

この連載の一覧はこちら
スージー鈴木 評論家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事