鈴木敏夫氏「ひっそり生きたほうが幸せです」 「認めてほしい」という思いを捨てませんか?
頭ではなく体で覚えた仏教
――鈴木さんが仏教に接したのはいつごろですか。
僕は中高一貫校の東海学園で学びました。仏教校ですから、1年に何度も京都や奈良に連れていかれる。それが丸6年間続きました。最初は何の興味もなかったのですが、2年経ち、3年経つうちに仏教を身近に感じるようになりました。
たとえば夏の合宿で昼や夜の食事のときには、「本当に生きんがために、この食を食します」と言わないといけない。南無阿弥陀仏の勉強もやらされました。そういうことを日常的にやっていると、頭ではなく体で覚えるようになってくるのです。
――大人になってから禅を学んで、人生の考え方が変わったという話をよく聞きますが、鈴木さんは子どもの頃から禅が体に染み付いていた?
そうですね。自分が未発達なときに禅に接しましたから。僕らの学校は浄土宗ですが、仏教というくくりでは禅も近くにあって、坐禅も学校でやりましたよ。
――東海学園は男子校です。仏教校であるより前に男子校であることのインパクトも強かったのでは?
そうです、男子校は独特ですよね。こういうことがありました。高校2年になると、勉強ができるかどうかを基準にA群とB群に分けるのです。さらにB群も高校3年になると、勉強がどうにもならない生徒を1つのクラスに集める。僕も勉強していなかったのでそのクラスに放り込まれた。そのクラスは50人くらいいるのですが、なんと留年生が20人もいて、最高齢が24歳だったんですよ。
そのクラスの中で生きていくのは結構大変でした。最初に中間考査があって、忘れもしない英語のテストですよ。1時間50分かけて答案用紙に答えを書いた。そうしたらある同級生がいきなり寄ってきた。彼は柔道の全国大会個人戦で2位になった男なのですが、僕に「鈴木、悪い!」って言ったんですよ。何かなと思ったら、「答案を交換してほしい」と。
そいつは、すぐに僕の答案を持っていって、その場で僕の名前を消しゴムで消して自分の名前を書いた。で、そいつから渡された答案用紙を見たら答えがめちゃくちゃで、名前も「鈴木敏夫」と書いてある。
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