西欧諸国につきまとう「植民地支配」賠償の悪夢 アジア、アフリカ諸国からの賠償要求は今後も続く
2023年5月、チャールズ国王の戴冠式の際、インドとイギリスの間で1つの小さなもめごとがあった。それは、カミラ王妃が即位式でヴィクトリア女王(1819~1901年)の王冠をかぶるのかどうかという問題であった。
結果はかぶらなかったので事なきを得たが、インドはこれに対し不快の念を示した。それは、このダイヤモンドが、19世紀半ばから始まるイギリスによるインドの植民地化の象徴だからであった。
ヴィクトリア女王は1876年にインドの女帝になった。名実ともにインドは、イギリスの支配下に組み込まれた。インド帝国は、イギリスの植民地の名称になったのである。
イギリスで問題となったインド産ダイヤモンド
ヴィクトリア女王の王冠には、世界で一番大きいと言われてきたダイヤモンドがつけられている。そのダイヤモンドは、19世紀半ばにイギリスがインドから戦利品として獲得したものだ。今その王冠は、ロンドン塔にある博物感に展示されている。とても厳重に保管されているが、ロンドン塔を訪問する観光客の最大の目玉である。
このダイヤモンドの由来は正確にはわかっていないが、14世紀には歴史に登場する。そしてあちらこちらを転々とし、第2次シク戦争(1848~1849年)のときに、その戦利品としてイギリスのものになり、1850年にヴィクトリア女王の所有になったという。
シク戦争は1845年から1846年の第1次シク戦争とともに、イギリスの東インド会社と、北西インドを支配していたシク王国との間に起こった2つの戦争だ。
力あるものがそのダイヤモンドを所有してきた歴史から見れば、19世紀の世界を支配したイギリスは、そのダイヤモンドを力によって奪ったのであり、当然の結果だったともいえる。
しかし、今や21世紀だ。インドの経済成長は目覚ましく、GDPにおいてもインドはイギリスを抜いている。今やインドは従属するインドではなく、自立するインドである。現在のイギリスの首相であるリシ・スナクもインド系の人物だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら