LINEの「スマホ証券」損切りが映す手数料競争の沼 若年層を取り込んでも収益化の道筋は見えず
LINE証券の証券事業を引き継ぐ野村は、この課題に向き合うことになる。
野村に限らず、対面型の証券会社にとって、若年層の取り込みは長年の願望でもある。政府が「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げる中、資産形成をする世代をいかにビジネスに組み込むか。模索を続けてきた。
2019年に野村がLINE証券の設立に参加したのはそうした背景があったからだ。LINE証券は150万口座という大規模な顧客基盤を作り上げたうえに、口座開設者の8割弱が40代以下とその属性も若年層が中心だった。収益に結びつかなかったとはいえ、これだけ多くの顧客にアプローチできたのはLINE証券の成果と言える。
顧客流出は避けられない?
ただ、こうした顧客を野村に引き止めることは難しい。2024年にLINE証券の口座は野村に引き継がれるが、サービスは野村のものに合わせられるからだ。1株取引などのサービスはできなくなり、取引手数料も上がる。富裕層向けに最適化されたサービスにLINE証券の顧客は魅力を感じず、相当数の顧客が解約することが見込まれる。
野村も手をこまぬいているわけではなく、資産運用アプリの開発などはしているが、若年層の囲い込み戦略は出直しを余儀なくされる。設立当初から赤字を出し続けたLINE証券に対して、2022年3月期まで150億円近い損失を負担してきたが、それに加えて4年という時間を失った。今後、若年層にどうアプローチしていくのか、個人営業部門の方針を見直す必要も出てきそうだ。
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