「恥ずかしい決算となってしまった」。ある中堅地銀の財務担当者はこぼす。この地銀の2023年3月期決算は、外国債券(外債)の売却損が膨らみ、前期比で大幅減益となってしまった。
地銀にとって2023年3月期は、外債に悩まされ続けた1年といっても過言ではない。アメリカを筆頭に急ピッチで金利が上昇したことで、保有する外債の価格が下落。時価が簿価を下回る評価損が拡大した。
為替ヘッジのために用いていた外貨の調達コストも上昇し、外債の利回りを上回る「逆ザヤ」も発生。外債を保有し続けるだけで損失が発生するため、多くの地銀が損失覚悟で売却に踏み切った。
マイナス金利政策が長引く日本と、利上げが進む海外。板挟みの中で迎えた地方銀行の本決算が出揃った。懸念された企業倒産こそ大きくは増えていない代わりに、冒頭のような外債の損切りを断行した結果、大幅減益となった地銀が相次いだ。
最新決算を基にランキング
そこで東洋経済では、全国の地銀99行の最新決算を集計。個別行ごとの脆弱度を分析し、ランキングを作成した。
ランキングの作成方法は下記の通りだ。健全性、収益力、有価証券の運用力に関するデータを抽出し、点数化。総合得点の低い順に並べている。
採点では、財務の健全性を重視し、配点を50点とした。一方、海外での利上げや日本国債の利回り上昇を受けて、各行が保有する有価証券の評価損が膨らんでいる。そのため、有価証券の評価損益を新たに項目として設けた。
ワースト1位は福井県の福邦銀行。地銀の中で最も低い自己資本やマイナスに沈む本業利益が依然として課題だ。2位は鹿児島県の南日本銀行。2022年末に公的資金150億円を前倒しで完済したものの、突出した不良債権比率が不安要素としてくすぶる。
ランキング下位に位置する地銀でも、和歌山県の紀陽銀行や茨城県の常陽銀行は経費率が100%を超えている。評価損を抱えた外債の売却を急いだ結果、業務粗利益が蝕まれて経費を下回ってしまったためだ。
一方、多額の損失処理に踏み切れたのは、損失を吸収できる体力があった証左でもある。本業収益力が弱く自己資本も薄い地銀は、経済的なショックに対して脆弱であることに留意する必要があるだろう。