地方銀行にとって、融資と並ぶ収益柱となっているのが、有価証券運用だ。ところが、足元でその屋台骨が揺らいでいる。保有する有価証券の「評価損」が拡大しているのだ。
銀行は四半期ごとに、株式や債券、投資信託などの有価証券を時価評価している。2022年度は海外の金利が上昇し、外国債券(外債)の価格が下落。時価が簿価を下回る「評価損」が急膨張した。
評価損は、売却しない限り損失として計上されない。だが、地銀は一般的にドルやユーロを調達して外債に投資しており、海外金利に連動して外貨の調達費用も上昇している。調達費用が債券の利回りを逆転する「逆ザヤ」に陥ると、保有し続けるだけで損失が出る。そのため、多くの地銀は多額の損失を計上してでも、外債の売却を急いでいる。
加えて、2022年末には日本銀行が金融政策を見直したことで日本国債の利回りも上昇。保有する国債の価格が下落し、こちらも評価損が発生した。円債は預金が原資のため逆ザヤに陥るリスクは低いが、体力のある地銀は入れ替えを進めている。
最新決算を基にランキング
では、地銀が保有する有価証券はどれほどの評価損益が出ているのか。東洋経済は地銀99行を対象に、2023年3月末時点における「その他有価証券」の評価損益を集計した。一部の地銀はデリバティブ取引を行い金利リスクをヘッジしているが、ランキングではヘッジ前の数値を採用している。
今回は参考情報として、自己資本比率も掲載している。評価損を抱える有価証券を売却した際の損失を吸収できる余力がどれだけあるかは、合わせてみておく必要があるだろう。
ワースト1位は島根県の山陰合同銀行。2022年度に国内外の債券約3500億円を売却したが、依然556億円の評価損を抱える。同行は2022年9月末時点でも、地銀の中で最も評価損が大きかった。
反面、ランキング下位で優等生とも言える銀行に共通するのは、莫大な株式評価益だ。評価益が最も大きい京都銀行は、京都府に本社を構える企業の株式を中心に、株式評価益が約7600億円発生している。円債や外債などの評価損約400億円を軽々と補った。
ただし、地銀が保有する株式には、取引先との関係構築の一環で保有している政策保有株式も少なくない。 ガバナンス強化の観点から、政策保有株式は可能な限り縮減することが潮流だ。株式評価益に頼らず、有価証券の運用力そのものを強化する必要がある。