楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す

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楽天銀行の上場会見
4月21日に上場を果たした楽天銀行。ネット専業銀行の上場としては、住信SBIネット銀行に次ぐ2例目だ(撮影:今井康一)

楽天銀行は4月21日、東証プライム市場に上場を果たした。公開価格ベースでの時価総額は約2380億円と屈指の大型IPOとなったが、耳目を集めたのは楽天銀行自身よりもむしろ、親会社である楽天グループだった。

2021年9月に楽天銀行が上場準備に着手してから1年半。国内最大手級のネット銀行による上場劇は、最後まで親会社に翻弄された。

親会社による「金策」

「成長資金を獲得するため、上場を検討している」。2021年11月、楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は決算説明会において、初めて楽天銀行の上場に言及した。

上場の意義について、楽天銀行は「より自律的な経営視点と成長戦略を遂行できるとともに、独自の資金調達を含めた様々な成長及び財務戦略を検討することが可能になる」と説明する。ただ、親会社の苦しい懐事情が上場を後押しした面もある。

楽天Gは2018年に携帯事業者として認可を受けて以来、子会社である楽天モバイルを通じて多額の資金を投じている。

当初の計画では基地局建設などの設備投資費用を総額6000億円で十分としていたが、2020年末時点ですでに5000億円弱に膨張。計画以上に投資額が膨らむのは明白で、資金を確保する必要があった。楽天銀行の上場には、株式売り出しによる楽天Gの金策の色合いがにじんだ。

「PBR(株価純資産倍率)6~10倍」。上場発表時の資料で楽天Gは先駆的な銀行のPBR水準を示していた。楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた。

引き合いに出したのは、2021年8月に韓国取引所へ上場したネット専業銀行「カカオバンク」。初日の時価総額は3兆円規模に達した。さらにブラジルのネット専業金融グループ「ヌー・ホールディングス」も比較対象に挙げた。2021年末のニューヨーク証券取引所に上場した際、時価総額は一時6兆円以上に膨らんだ。

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