幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱
終わったのか――。「新銀行」の開発を受託していた企業の担当者は、流れてきたニュースを見て驚いた。事前の連絡はなく、プロジェクトは唐突に終焉を迎えた。「それなりに開発が進んでいただけに、残念だ」。
3月30日、LINEはみずほフィナンシャルグループ(FG)と共同で進めてきた「LINE Bank」(以下、LINEバンク)の開業を中止すると発表した。
「(サービス開発に)さらなる時間と追加投資が必要であり、スムーズな提供が現時点で見通せない」ためという。新銀行の母体となるはずだった設立準備会社は解散・清算される。
開業の意義は失われた
空転の4年半だった。LINEが銀行業への参入を表明したのは2018年11月。若年層を中心に月間7800万人(当時)を誇る顧客基盤を生かし、スマートフォンを起点とする新たな銀行を掲げた。
華々しい構想とは裏腹に、LINEバンクはつまずきの連続だった。
関係者によれば、銀行の心臓部である勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた。同年に台湾法人がLINEバンクを開業させており、その勘定系システムを開発した実績を評価したようだ。
だが、乗り換え先のベンダーは日本での稼働実績がない。「金融業への規制が違えば、勘定系システムに求められる要件も異なる。海外で実績があるからといって、日本でもスムーズに稼働するとは限らない」。別のITベンダーはそう評する。2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した。
もたつくLINEバンクを尻目に、同業のネット銀行は口座数や預金量を着々と伸ばしていった。旧来型の金融機関においても、2021年にふくおかFGが「みんなの銀行」を、2022年には東京きらぼしFGが「UI銀行」を開業するなど、ネット専業銀行の設立が相次いだ。
銀行機能の一部を切り出して提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の台頭も逆風となった。預金や貸し出し、決済といった銀行機能を事業会社が容易に搭載できるようになり、銀行業への参入障壁は著しく下がった。群雄割拠のネット銀行業界にあって、費用と時間をかけてまでLINEバンクを開業する意義は失われていった。