幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱

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見果てぬ夢となったLINEバンク。だが、LINEにとって今回の撤退劇は前哨戦にすぎない。

「重複事業や重複機能に手を入れてコストを最適化する」

2月2日に開催されたZホールディングス(HD)の決算説明会上、坂上亮介専務執行役員最高財務責任者はそう説明した。

同日、ZHDは2023年度中にも傘下のLINE、ヤフーと合併する方針を発表していた。LINEがZHDと経営統合したのは2021年3月。ポータル機能の強化を目指すヤフーとは、もともと重複するサービス・機能が多かったが、組織体制上の問題などから事業再編は進んでこなかった。

目下ZHDでは、収益柱である広告事業が低迷している。合併により事業の整理・統合を加速させて、コスト削減や意思決定の迅速化を図る狙いだ。LINEバンクの開業中止と3社合併についてZHDは「直接の関係はない」とするものの、あるZHD社員は「統合に沿った動きとして、まったく違和感はない」と語る。

金融事業にさらなるメスか

これから本格化する事業整理において焦点となるのは、同じくLINEが展開する金融事業だ。不採算が続くうえ、グループ内に「PayPayブランド」の類似サービスが存在するためだ。あるZHD関係者も「グループ全体でPayPay経済圏を強化している中、その牽引役となる金融事業を軸に統廃合が進むのでは」とみる。

LINEの主な金融子会社一覧

赤字額が最も大きいLINE証券は、株式投資の手軽さを訴求すべく1株単位の売買を可能にした結果、小口取引が中心となり、委託手数料が稼ぎにくい構図に陥った。一方のPayPay証券も黒字化には至っていないが、3月31日にはソフトバンク、みずほ証券の3社に対して100億円規模の第三者割当増資を行うなど、着々と事業拡大を進めている。

無担保ローンや信用スコアリングを展開するLINE Creditも、2018年5月の設立以来、純損失が膨張の一途をたどる。2022年12月には、同じく無担保ローンを提供していたみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社「Jスコア」と事業統合を行うと発表したものの、抜本的な収益改善は見込みづらい。

LINEにとって金融事業はアキレス腱だ。2021年に「LINE家計簿」、2022年にテーマ型株式投資の「LINEスマート投資」から撤退した。2023年4月末には損害保険サービス「LINEほけん」が終了する一方、一部商品は「PayPayほけん」で引き続き販売される。メッセージアプリを通じた潤沢な顧客基盤を抱えていながら、金融事業では収益に結び付けられていない。

2月にZHDが公表した決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記されている。LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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高野 馨太 東洋経済 記者

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たかの けいた / Keita Takano

東京都羽村市生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中に中国・上海の復旦大学に留学。日本経済新聞社を経て2021年に東洋経済新報社入社。担当業界は通信、ITなど。中国、農業、食品分野に関心。趣味は魚釣りと飲み歩き。

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