雅叙園に電通ビル、外資が狙う日本不動産の熱狂 過去の相場を更新する取引が飛び出す背景

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アジアから欧米まで、世界中の投資家が日本の不動産に視線を送っている(デザイン:藤本麻衣)
本社ビルに老舗ホテル。大型の不動産取引が耳目を集めて久しいが、売却された不動産の受け皿となっているのは、日本の不動産会社だけではない。海外の資金を後ろ盾にした不動産ファンドも、日本の不動産を買いあさっている。
『週刊東洋経済』6月20日発売号は「不動産争奪戦」を特集。海外の投資家が日本の不動産に投資する背景や、国内デベロッパー・外資系不動産ファンド各社の戦略、そして話題をさらった不動産売却劇の内幕に迫った。

東京都目黒区の複合施設「目黒雅叙園」。1931年に開業した料亭が源流で、約3.7万平方メートルの敷地には2棟のオフィスビルや結婚式場が立つ。都の有形文化財に指定された宴会場「百段階段」を抱える伝統ある施設だが、不動産業界では曰(いわ)く付きの物件だ。

雅叙園はこれまで3度転売されてきた。最初は2002年。バブル期の投資の反動で破綻した運営会社に代わり、アメリカの投資ファンド・ローンスターが買い取った。ローンスターは2014年に森トラストに約1300億円で売却。その5カ月後、森トラストは雅叙園を中国の政府系ファンド・CICに約1430億円で転売し、現在に至る。

国内外のプレーヤーが入り乱れ

CICから雅叙園の運用を受託していたラサール・インベストメント・マネージメントは、不動産市況の好調を受けて2021年から売却を模索。2022年5月にアドバイザリー業者の選定活動に着手した。

打診を受けた業者からは、参考価格として2000億円以上での売却を提示されたケースもあったようだ(詳細は5月配信記事:スクープ、「目黒雅叙園」2000億円規模で売却か)。

週刊東洋経済 2022年6/25号[雑誌](不動産争奪戦)
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目黒駅から徒歩3分とはいえ、周辺は閑静な住宅街でオフィス立地とは呼びがたい。オフィス仲介会社の間では、中核テナントのアマゾンが近々退去する噂も流れる。それでも「伝統があるうえ、目黒には大規模オフィスがないため貴重な存在。海外投資家が関心を示すだろう」(不動産関係者)。

海外の投資家が目をつけるのは、雅叙園だけではない。2021年9月に大手デベロッパーのヒューリックなどが取得した東京・汐留の「電通本社ビル」も、国内外の投資家が入り交じる争奪戦を繰り広げた。

地上48階建ての同ビルの売却話が浮上したのは、2020年秋ごろのこと。所有者である電通グループは自ら声をかけた投資家のみを対象に、非公開での入札を進めた。

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