雅叙園に電通ビル、外資が狙う日本不動産の熱狂 過去の相場を更新する取引が飛び出す背景

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ピークといわれて久しい不動産市場だが、天井を打つ気配はまだない。過去の相場を軽々塗り替える取引がまた一つ出現しそうだ。

日本屈指のビジネス街、東京・大手町に立つ超高層ビル「大手町プレイスイーストタワー」。地上32階建てのビルで、住友商事などが本社を構えている。ビルの大部分を保有する国が売却の意向を示しており、2022年9月に入札が実施される予定だ。(詳細は2月配信記事:超高層ビル「大手町プレイス」異例ずくめ売却劇)。

大手町プレイスイーストタワーには電通本社ビルをしのぐ値がつきそうだ(写真:記者撮影)

簿価2400億円に対して、当初売却価格は電通本社ビルと同水準の3000億円規模という見方が有力だった。だが、別の不動産ファンド幹部は「3000億円ではとても落札できない。4000億円も視野に入れつつ数字をはじいている」と話す。

不動産ファンドの存在感はいっそう強まる。3月、アメリカの投資ファンドKKRが、J-REIT(不動産投資信託)運用会社で最大手の三菱商事・ユービーエス・リアルティを2300億円で買収すると発表した(詳細は4月配信記事:KKR、Jリート運用会社を「2300億円」で買収の衝撃)。

KKRはPE(プライベートエクイティー)ファンドでは世界大手だが、不動産については後発組。運用会社買収を通じて空白地帯を埋めるほか、成長の見込まれる日本の不動産に中長期的に関与する姿勢を誇示した形だ(詳細は6月配信記事:KKR責任者に直撃、Jリート会社「巨額買収」の本心

国内デベロッパーは独自路線

鼻息荒い不動産ファンドに対して、国内のデベロッパーの存在感は薄い。「われわれは開発が仕事。完成したビルを買うファンドとは違う」。大手デベロッパー幹部は言い切る。

老朽ビルならまだしも、築年数の浅いビルを取得する意義は乏しいという。取得競争に熱を上げるファンドとは一線を画し、土地を買うのではなく再開発などで「つくる」ことに精を出す。

既存ビルの取得にしても、不動産ファンドのような転売が主眼ではない。2020年11月、住友不動産は東京都港区のJT本社ビルを取得した。1995年の竣工で築年数が経過している。現状はオフィスビルとして賃貸しているが、長期的には建て替えも視野に入れる。

不動産ファンドとデベロッパー。それぞれの土俵で繰り広げられる両者の乱戦は一層強まりそうだ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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