楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す

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縮小

ところが、2022年に入ると欧米の金利上昇や景気後退懸念を受けて、ハイテク株が相次いで下落した。カカオバンクやヌー・ホールディングスの足元の株価は、上場当初からおよそ3分の1に縮小している。

向かい風が吹く中でも、楽天Gの資金繰りを考えれば楽天銀行の上場をいたずらに延期することはできない。こうして2022年7月、楽天銀行は東京証券取引所に上場申請を行った。

ネット銀行の評価が後退する中、楽天銀行は当初の目標だった2022年中の上場を断念。少しでも高値で上場できるタイミングを探った結果、「東証からOKをもらいマーケット状況もまずまずと判断した」(楽天銀行の永井啓之社長)として、2023年4月の上場を目論んだ。

3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。

理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ。

調達・運用ともに「楽天経済圏」

楽天銀行は楽天経済圏を2つの面で活用している。1つは預金の獲得だ。1億超を誇る楽天ID保有者に対して、ネット通販や証券、カードなどほかのサービス利用時のメイン口座としての利用を推進。2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準だ。

調達のみならず、運用サイドにおいてもグループとの関係を活用している。2022年末時点における楽天銀行の運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく。

楽天銀行の運用ポートフォリオ

調達・運用両面で楽天と絡み合う構図に投資家が懸念を示したためか、楽天銀行は4日、英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記した。

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