楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す

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最終的に公開価格は1400円となった。親会社から飛び火した信用リスクに加えて、「資金繰りを考えれば、これ以上上場は先延ばしできない」(金融筋)と、足元を見られた面もあったようだ。

21日の初値は1856円と公開価格から3割も上昇し、楽天にとっては「底値」で楽天銀行を売却させられた形となった。初値から逆算したPBRは約1.5倍と、6〜10倍どころか、2021年11月に「従来型『銀行』」と揶揄した水準と同程度に着地した。

株価について永井社長は「マーケットや投資家のセンチメントはコントロールできない。証券会社の意見を伺いながらそれぞれのタイミングで価格を決めた」と述べるにとどめた。

上場後に問われる成長戦略

すったもんだの末の上場となった楽天銀行。楽天本体は引き続き約63%を保有する筆頭株主として君臨するが、外部資本を調達した以上、親会社におもねる経営を続けることは許されない。「楽天(本体)が銀行の経営に指示をしてはならないシステムを構築している。少数株主の利益を害さない意思決定をできる」(永井社長)。

楽天銀行は2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる。上場に伴う公募増資などで調達した約140億円も活用しつつ、当面は株主還元よりも成長投資を重視する方針だ。

楽天銀行の経営指標

今後の焦点は、法人向け事業の伸長やグループ外の企業との連携だ。帝国データバンクによれば、2022年10月末時点で楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破した。法人顧客には専門の営業担当者を配置し、「ITを活用して、他の銀行ではできないソリューションを提案したい」(永井社長)。

2023年1月には、JR東日本と共同でネット銀行を開業すると発表した。楽天銀行が事業会社に銀行機能を提供する形で、これまでも第一生命や地銀と協業している。楽天経済圏を基盤としつつも、グループ外の企業との提携を通じた果実を取り込むバランス感覚も問われる。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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