地方銀行は「本業」でどれだけ稼いでいるのか。それを示す指標が「本業利益」だ。
本業利益は金融庁が提唱した概念だ。融資やコンサルティング、金融商品販売などの稼ぎから、経費を差し引いて算出される。有価証券運用による収益を除くことで、地銀が地元顧客にどれだけ向き合っているかを示す指標となる。
東洋経済は全国の地銀の2023年3月期決算を基に、本業利益を独自で算出。全国99行のうち14行が「本業赤字」に陥っていることがわかった。
融資一辺倒から脱却へ
ワースト1位は福井銀行。貸出金利息を伸ばし、店舗統廃合といった経費削減も進めたが、本業の黒字転換には至らなかった。2位の長野銀行や3位の富山第一銀行も本業赤字が続いている。
反対に、本業利益が大幅に改善したのは三重県の三十三銀行だ。順位は44位となった。2022年3月期の本業利益はマイナス21億と赤字額が最も大きかったが、2023年3月期は一転して29億円の黒字となった。同行は2021年5月に三重銀行と第三銀行が合併して誕生したが、システム統合などの費用がなくなったことで、黒字化を達成した。
本業で利益を上げている地銀に共通するのは、手数料ビジネスの拡大だ。本業利益が最も大きい横浜銀行は「ソリューション営業」を掲げ、M&Aや不動産といった専門性の高い案件への融資に注力する。90位のきらぼし銀行は2022年度に広告代理店や債権回収会社を買収するなど、非銀行業務の拡大を進める。
2023年度は賃上げやデジタル投資など、本業利益のマイナス要因となる経費の増加圧力が強まっている。融資一辺倒から脱却し、付帯取引を通じた手数料の拡大へ。「本業」のテコ入れが急がれる。