銀行の自己資本比率には厳しい規制が敷かれている。民間企業の中でも公共性が高く、破綻した場合の影響が大きいためだ。ほとんどの地銀が該当する国内基準行では4%、積極的に海外展開を行う国際基準行は8%以上を保つことが求められ、それを下回ると経営改善計画を策定する必要がある。
では、地方銀行の財務は健全に保たれているのか。東洋経済は地銀99行の決算を集計し、各行の自己資本比率を低い順にランキングした。なお、一部地銀は信用リスク格付け手法の見直しやバーゼル3の早期適用によって、数値がカサ上げされている。
ワースト1位は福井県の福邦銀行。2位の中京銀行に1%以上の差をつけ、自己資本比率は地銀唯一の5%台となった。主因は収益力の低迷だ。2023年3月期決算は26億円のマイナスと、2期連続で最終赤字となった。2位の中京銀行や5位のきらやか銀行も、2023年3月期決算が最終赤字に沈んだことで、自己資本比率が前期から悪化している。
利益が出ていても、自己資本比率が低下する場合もある。4位の西京銀行は2023年3月期決算で54億円の最終黒字を計上したが、自己資本比率はむしろ0.82%低下した。貸出残高が1年間で1200億円以上増えた結果、自己資本比率の分母となるリスクアセットが分子の自己資本以上に増加したためだ。
高すぎる自己資本比率も課題に
健全性は重要だが、自己資本を貯め込むことも、株主から問題視されかねない。東京証券取引所は資本コストや株価を意識した経営を要請しており、健全性を盾に自己資本比率をいたずらに高く保つことは難しくなっている。
大株主から2年連続で還元強化を求める株主提案を提出された89位の京都銀行は、3月に公表した中期経営計画において、総還元性向(配当と自己株取得の合計)50%以上という地銀最高水準の還元方針を表明した。
このほか、貸出金などリスクアセットの積み増しや成長投資を通じて、自己資本比率を意図的に引き下げようとする動きも散見される。資本の蓄積と活用のバランスが、地銀の経営課題となっている。