LINEの「スマホ証券」損切りが映す手数料競争の沼 若年層を取り込んでも収益化の道筋は見えず

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LINE証券の挫折は、スマホ証券の収益化という課題を証券業界に残した。

「小口顧客からいかに収益を上げられるかという問題を解決できなかった」。証券業界関係者はLINE証券の撤退について残念そうに話した。証券会社が収益を得る仕組みは、顧客が株取引した際に発生する委託手数料が基本だ。ところが、2022年3月期、LINE証券が手にした委託手数料は2億円あまりに過ぎなかった。

国内株は通常100株からの取引だが、LINE証券では1株から売買できるようにしたり、夜間取引にも対応したりとサービスは充実していた。さらに、野村證券と同レベルの堅牢なシステムを導入。それらの費用がかさみ、105億円もの巨額の純損失を垂れ流していた。

顧客が増えても収益は上がらず

この赤字を打ち返すためには、収益を伸ばすしかないが、その方策が見当たらなかった。口座数は150万口座と、ネット証券大手の松井証券(2023年3月末で145万口座)を超える規模まで成長したものの、小規模な取引しかしない小口顧客をいくら集めたところで、収益拡大はできなかった。

折しも、ネット証券最大手のSBI証券が、2023年中に証券取引手数料を無料化する方針を打ち出している。LINE証券も追随するか、さらに手数料率を下げなくてはならなくなる。今後の見通しとしても好転する兆しは見えなかった。

その結果、ある程度の収益を生み出せるようになったFXのみを残し、ほかの事業からの撤退に追い込まれた。

別の証券関係者は「LINEからやってくるような小口の顧客を相手にする場合、サービスの要件を抑えることが重要。LINE証券ではそれが拡大し、軽自動車で済ませたかったのにいつの間にか大型バスになってしまっていた」と指摘する。

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