LINEの「スマホ証券」損切りが映す手数料競争の沼 若年層を取り込んでも収益化の道筋は見えず
銀行に続き証券も――。LINEが金融サービスからの撤退を加速させている。
150万口座を抱えるスマホ証券の一角、LINE証券は6月12日、FX(外国為替保証金取引)を除く事業から撤退すると発表した。証券サービスは順次買い付け等を停止し、預かり資産はLINE証券に49%を出資する野村ホールディングス傘下の野村證券に2024年中に移管する。LINE証券の特徴だった1株単位での取引やCFD(差金決済取引)はできなくなる。
2019年に発足したLINE証券は、LINEが持つ巨大な顧客基盤を金融業界につなぐ取り組みとして注目された。提携した野村も、顧客の高齢化に直面する中、若年層の取り込みにつながる動きとして重視していた。こうした当初のもくろみは頓挫した。
示唆されていた「撤退」の可能性
背景にあるのがLINEの親会社であるZホールディングスの方針転換だ。
2022年10月にスマホ決済のPayPayを子会社化したZHDは、2023年になると一転して「選択と集中」路線を歩み始めた。3月にはみずほフィナンシャルグループ(FG)と共同で開発してきたスマホ銀行「LINE Bank」の開業を中止。4月28日の決算説明会ではLINE関連の金融事業について「黒字化できない事業は、選択と集中の対象となる可能性がある」としていた。
LINEが展開する金融事業にはPayPay銀行やPayPay証券といった重複するサービスが多数ある。特にLINE証券は、開示されている最新の2022年3月期の純損失が105億円と大きく、整理対象となるのではないかとささやかれていた。実際、2023年春には野村が複数の会社にLINE証券の売却を打診するなど水面下での動きが活発化していた。結果的に買い手は見つからず、事実上の廃業に追い込まれた。
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