私たち人類が過酷な環境を生き延び、さまざまな問題を解決し、世界中で繁栄することができたのは、「協力」という能力のおかげだ。
だが、人間のみならず、多くの生物が協力し合って生きている。そもそも多細胞生物は、個々の細胞が協力し合うことから誕生したものであり、生命の歴史は協力の歴史ともいえるのだ。
一方で、協力には詐欺や汚職、身内びいきなどの負の側面もある。それでは、私たちはどうすればより良い形で協力し合うことができるのだろうか?
今回、日本語版が6月に刊行された『「協力」の生命全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
権力や地位は他者の支援に依存している
他者よりも優位に立ちたいという欲求、公平な分配よりも少し多めに手に入れようとする欲求、そして可能なら権力を掌握したいという欲求はすべて、ヒトがもともと備えている性質の一面だ。
しかし、民主的な制度のような文化的な発明は、この上なく冷酷な人物を抑え込むことができる。暴動や反乱の事例からは、ヒトの社会生活についてより根源的な要素も浮かび上がってくる。
このような対立を詳しく調べると、権力や地位が社会的ネットワークにいる他者の支援にどれだけ依存しているかがわかってくるのだ。
友人は利益をもたらすということがはっきりわかる。無粋な現実ではあるが、連携や交友関係、同盟は私たちの目標の達成を手助けする社会的な手段として機能している(たとえこのように思っている自覚はなくても)。
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