ヒトだけが「他人との比較」に執着するのはなぜか 人類に刷り込まれている不公平への拒否感

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自分の財産と他人の財産を比べるという傾向は、人間の心理に刷り込まれているようです(写真:buritora/PIXTA)
私たち人類が過酷な環境を生き延び、さまざまな問題を解決し、世界中で繁栄することができたのは、「協力」という能力のおかげだ。
だが、人間のみならず、多くの生物が協力し合って生きている。そもそも多細胞生物は、個々の細胞が協力し合うことから誕生したものであり、生命の歴史は協力の歴史ともいえるのだ。
一方で、協力には詐欺や汚職、身内びいきなどの負の側面もある。それでは、私たちはどうすればより良い形で協力し合うことができるのだろうか?
今回、日本語版が6月に刊行された『「協力」の生命全史』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

「お金で幸せを買えますか?」

お金で幸せを買えるかどうか聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか?
既存のデータが示すのは、2つの対照的な答えだ。大規模な調査では、社会で相対的に裕福な人のほうが貧しい人よりも幸せだという結果が得られることが多いから、そこから考えると答えはイエスかもしれない。

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しかし、多くの欧米諸国では過去50年で1人当たりの収入は大幅に増えたにもかかわらず、市民の平均的な幸福度はほとんど変わっていない。この結果からは、冒頭の問いへの答えはノーと言えそうだ。

この明らかな矛盾は「イースタリン・パラドックス」と呼ばれている。この奇妙な傾向を最初に記載した教授にちなんだ用語で、次のように説明することができる。「幸せを買うのはお金そのものではなく、自分と似たような人々よりも多くお金をもっているという認識だ」。

さらに言うと、仲間よりも財産が少ないという考えは、ヒトにおいて人生の満足度を下げる最大の原因の1つである。

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