「和食より地中海食が良い」が科学的でない理由 間違いだらけの「エビデンスのある健康的食事」
やや強引ですが、仮にこの研究結果が日本人にも当てはまるとしましょう。それでも、地中海食が和食より健康効果が高いかどうかはわかりません。当然ですよね、和食と比較しているわけではないのですから。
間接的にも、
和食→ランダム化試験が行われていない
という事実をもって、「地中海食>和食だ」と結論できるわけありません。
事実、和食に関するエビデンスは、地中海食ほど豊富にはありません。でも、ランダム化試験がないからといって、和食に健康効果が見込まれないかというと、そんなことは決してありません。
魚、発酵性大豆製品(味噌や納豆)、海藻、緑茶など、和食の構成要素は健康に良いものですし、常識的に和食が日本が世界的な長寿を達成している大きな要因なのは間違いありません。精力的に研究して日本からエビデンスを発信している研究グループもあります(※4、※5)。
地中海食が日本人の食習慣になりうるかというと、それはそれで疑問です。外食で好んで地中海食料理屋さんに行く方、5年間地中海食だけを食べてくれと言われて「ぜひやりたい!」と思う方、どれほどいるでしょうか。地中海食はスペインでこそ非常にポピュラーですが、日本人一般にすごくフィットした食事法とはとても言えないかと思います。
地中海食が好きであれば、それは間違いない、良い選択です。一方、例えば和食が好きな方は、無理してそれを地中海食にする必要はありません。より健康効果を狙いたいなら、和食の欠点(塩分が高いことなど)をどう補うか考えたり、料理の際には健康に良い油(オリーブオイルや菜種油)を使うことを心がけると良いかと思います。
「エビデンス」にだまされないために
社会学者が物理学のことをどれほど知っているでしょうか。さっぱりわからないと思います。同じように、「どうやって健康になれるか」という分野も確立した研究領域で、その専門家が世界にはたくさんいます(疫学、疫学者といいます)。
なおこれは医学部で習うような医学とは異なる学問です。でも不思議と、疫学を習ったことすらない人が、食事法などについて「エビデンス」を語る機会が多くあるのです。
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