「和食より地中海食が良い」が科学的でない理由 間違いだらけの「エビデンスのある健康的食事」
では、最も健康に良い食事とはどういったものでしょうか。食事の科学の一端に触れて考えてみましょう。
くじ引きで地中海食を5年続けた結果
西洋医学で一番信頼性の高いエビデンスは、ランダム化試験によるとされます。例えば、くじ引きで薬を飲むか飲まないか決め、1年後にどうなったのか(生存率の違いなど)比較します。薬を飲むかどうかがランダムに決まるので、もし生存率に差があれば、それは薬の効果なんだろう、というわけです(因果関係ということ)。
これを食事で検証した研究があるのです。くじ引きで地中海食をするかしないか決め、なんと5年間もフォローしました。結果、心血管病リスクが30%(※1)、糖尿病リスクが50%も減った(※2)という驚きの結果でした。どんな薬でもこんなに強力な効果が示されることはまれです。
「地中海食が最強の食事だ」という、よく聞く“科学的な”主張は、主にこの研究結果に基づいています。このもっともらしい主張、何か問題があるのでしょうか?
実はこの研究は、スペインの心血管病リスクの高い方を対象としています。結果、95%以上が白人で、平均年齢は67歳なのでした。日本人とはそもそも体質も違えば、もともと食べているものも違います。この結果がどれほど日本人に当てはまるのか、かなり疑問ではないでしょうか。
さらにいえば、この研究の対象者は、なんと平均BMIが30、腹回りがなんと平均100cmでした。日本人でこのレベルの肥満の高齢者、というと、なかなか周りにいませんよね。
いくら効果があったといっても、日本人であるあなたに当てはまるとは言い難いわけです。
くじ引きで地中海食に当たらなかった人たちは、どんな食事をしていたのでしょうか。研究では、「脂質、オリーブオイル、ナッツ」を避けるように指導されました。
でもかたや、くじ引きで当たった人たちは健康に良いといわれている地中海食を毎日食べていることを知っているわけです。彼らも自然と地中海食を意識し、実際に豆、野菜果物、魚介などをきちんと摂取していたのでした。
結果、くじ引きの群間で最も異なったのは、オリーブオイルの使用量とナッツの消費量でした(※3)。ですので、この研究をもって「地中海食の効果」と断定するのは、少し強引なのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら