憂鬱な人は「ストレスが役に立つ」ことを知らない 臨床心理士が説く「プレッシャー」の上手な活用法

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「ストレスについてどう考えるか」が、プレッシャーにさらされたときのパフォーマンスに影響することを、研究が示している。ストレス反応を「問題」と捉えるのではなく、「役に立つもの」と捉えるようにすると、ストレス反応の抑制にエネルギーを奪われることなく、面前のタスクに全エネルギーを注げるようになる。その結果、ストレスに悩まされることが減り、自信が高まり、より良いパフォーマンスができるようになる。

このマインドセットの変化は、言うなれば「どれほどストレスが強くてもベストを尽くしなさい」から「ストレスの兆候を感じたら、そのエネルギーと集中力の高まりを活かしてベストを尽くしなさい」への変化だ。このようにマインドセットを変えるとストレスによる消耗が軽減されるというエビデンスがある(Strack & Esteves, 2014)。

どこへ行くにしても、ストレスが頭をもたげたら一緒に連れて行こう。ストレスを活用して、やるべきことに集中し、精力的にこなそう。本来、人はプレッシャーのもとで成果を上げるようにできており、きっとわたしたちもそのようにできる。それに気づくと、ストレスの兆候は、問題の「症状」ではなくなる。研究によると、「プレッシャーがかかるとパフォーマンスが向上すること」を知るだけで、実際のパフォーマンスが33パーセント向上するようだ(Jamieson et al., 2018)。

リフレーミングする

リフレーミングは「ある状況を違う枠組みから見ること」だ。自分が信じていないことを無理に真実だと思い込もうとするのではなく、ただ枠組みを変えるだけだ。新たな視点から状況を見ると、新しい意味を引き出すことができ、ひいては感情を変化させることができる。

たとえば「ストレス」を「決意」に、「脅威」を「挑戦」にリフレーミングしてみよう。たった1つの言葉を変えるだけで、身体的感覚に噓をつくことなく、その意味を変えることができる。ある感覚を「ストレス」や「脅威」と呼ぶ場合は、それらを嫌い、避けようとしている。そうではなく、「決意」や「挑戦」と呼ぶことで、わたしたちはその感覚を受け入れることを選択できる。

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