5歳のときに数学の面白さに目覚める
日本の女性科学者の草分けとして活躍した物理学者・米沢富美子。太陽電池などに使用されるアモルファス(結晶ではない固体)研究の第一人者であり、「コヒーレント・ポテンシャル近似」など数々の新理論を発表して物理学研究に大きな足跡を残した。
「物理というのは、日本語で“物の理(ことわり)”と書くんですね。(だから)物理とは物の理を解き明かす学問なわけです。じゃ、物ってなんだといわれると、森羅万象。宇宙に存在するすべてのものです。(中略)正しく学べばとっても面白い学問です」
女性初の日本物理学会会長を務めたほか、「女性科学者に明るい未来をの会」会長として女性科学者の支援にも尽力した。プライベートでは23歳で結婚、3人の娘を育てながら世界的な研究成果をあげ、「学会の子連れ狼」の異名を持つ。
米沢は1938(昭和13)年、大阪府吹田市生まれ。好奇心が強く、わずか5歳のときに数学の面白さに目覚める。
「私の母自身も数学が大好きで、私が紙でお絵描きしているときに、三角形の内角の和は二直角だというようなことを何気なく言ってくれたんですね。そこで、こんなおもしろいものが世の中にあるのか、と思ったんです」