歌舞伎町「ホストの食卓」を支えるシェフの生き様 売れるホスト、売れないホストの違いも見えてくる

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(撮影:梅谷秀司)

まかないがあることで、ホスト同士のコミュニケーション促進にもつながっていると思う、と安田さん。ホストになった動機や目標は人それぞれだが、いつか成り上がってやるという野心を誰しも抱いている。仲間でありライバルでもあるが、ホストたちは同じ釜の飯を食いながら、刺激し合い支え合い、励まし合って、日々の活力を養っているのだ。

安田さんも同様で、まかないを通じてホストたちとやり取りすることで、元気をもらっているという。好き嫌いが多いホストに、「食べられるようになりなさい」と言いつつ、苦手な食材はそっとよけてあげる。手間のかかるメニューをリクエストされ、「できないよ」と首を振るも、結局は作ってあげる。そんなツンデレな対応をすることもあるそうで、ホストたちへの安田さんの愛情がうかがえる。

「今は料理人が僕ひとりだけなので、なかなか休めないんですよね。でもちょっと具合が悪くても、お店に来ると元気になる。ホストたちと話していると、エネルギーをもらえるんですよね。かわいい子もそうでない子もいますが(笑)、結局みんなかわいいですね」

少しだけ寂しいのは、年齢を重ねるにつれ、ホストたちと飲みに行く機会が減ったこと。行くとすればお店の閉店後なので、大抵は朝帰りになり、疲れが取れないからだという。「お酒は大好きなのですが、もう若い子にはついていけないです」と安田さんは笑う。その代わり、料理を習いたいホストがいたら、教えていきたいそうだ。

「胃袋と心を支えてくれる、この店の大黒柱」

安田さんへの取材を終え、改めてホストたちに話を聞いた。

「こないだ、じっちゃんがバナナジュースをつくってくれたんですが、美味しくてびっくりしました! 喫茶店で出てくる、高いだけのやつとは全然違いました」

「某冷凍食品には負けてないんじゃないかな……冗談です、シェフの料理は本当にめちゃくちゃ美味しい」

「安田さんは、みんなのお父さんって感じです。胃袋と心を支えてくれる、この店の大黒柱ですね」

温かな関係性や距離感が表れている言葉だった。先輩でも後輩でも、上司でも部下でもない。親子のように、あるいは孫のように年の離れたシェフとホストたちは、これからも戦友として飲み仲間として、歌舞伎町で多くの時間を過ごすのだろう。

この連載の一覧はこちら
肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京生まれ。大学中退後、広告代理店勤務を経てフリーのジャーナリストに。

社会問題や人物ルポ、歌舞伎町や夜の街を題材に執筆。陽が当たりづらい世界・偏見を持たれやすい世界で生きる人々や、そこで生じている問題に着目した記事を書くことを使命としている

著書に『炎上系ユーチューバー 過激動画が生み出すカネと信者』など。新宿ゴールデン街「プチ文壇バー月に吠える」、四谷荒木町「ブックバーひらづみ」の店主でもある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事