相性が良くないホストもいなくはなかったが、それはどんな職場でも同じこと。いつしか、ホストクラブへのネガティブなイメージは消えていた。
数年後、そのホストクラブが支店を出すことになり、安田さんもシェフとして移籍した。それが現在働くトップダンディファーストである。安田さんの提案で、ホストたちにまかないを出すことになり、その調理も任されるように。ホストたちのためかと思いきや、「給料を上げてほしいと社長に相談したら、まかないも作ることになって(笑)」と裏側を明かす。経緯はともかく、それから約15年にわたって、ホストたちの胃袋を支え続けているのだ。
まかないのメニューは、親子丼、カレーライス、餃子、フライ、うどんなど和洋中さまざま。特徴として、ニンニクやニラなど、臭いがつく食材は使わない。二日酔いのホストもいるため、薄味にしたりカロリーを抑えたりと、気を配っている。ちなみに取材でおじゃました日のメニューは、卵かけご飯。決して手抜きではなく、ホストたちの胃腸を考慮し、週1回は固定化しているのだという。
売れるホストは、まかないを食べる姿でわかる
食べられるのは、新人もしくは売り上げが一定に満たないホストのみ。まだ稼げないホストたちの、食費の負担を減らすための福利厚生なので、食事代はかからない。ホストのひとりに話を聞くと、「まかないがあると出勤する気になるし、アフター代とか女の子に使うためのお金が残るので、すごく助かっています」と笑顔を浮かべた。
もちろん、売れっ子になって、まかないを卒業するホストもたくさんいるという。
「売れないときに『おなか空いた』っていつも言っていた子に、多めにまかないを出してあげていたんです。それが売れるようになって、びっくりするくらい給料をもらっていると聞いて、ホストはすごいなと(笑)。そういう子が、『久しぶりにまかないを食べたい』『お金を払うからつくって』って言ってくれることもありますね」
ちなみに売れるホストは、まかないを食べる姿を見ていると、何となくわかるのだそう。例えばあいさつ。「いただきます」「ごちそうさま」をきちんと言えるホストは、伸びることが多い。また食べ終えた後、食器は自分で洗うのがルールなのだが、丁寧に行うホストも同様だという。他人は自分を映す鏡というが、食事風景にも人間性が表れているのかもしれない。
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