高級寿司屋の大将が怖くても許される納得理由 客には「徹底的に尽くすのがいい」の落とし穴

拡大
縮小
高級すし屋や高級フレンチはしきたりが多くて行くのに気兼ねしてしまうにもかかわらず、繁盛しているのはなぜか? (写真:Fast&Slow/PIXTA)
私たちの常識は「高級サービスではお客様に徹底的に尽くせ」だが、真逆のことも多い。高級すし屋の大将は怖いし、高級フレンチもしきたりが多くて行くのに気兼ねしてしまう。それにもかかわらず、高級すし屋や高級フレンチは繁盛している。
その理由は何か。マーケティング戦略コンサルタントであり、『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』の著者でもある永井孝尚氏に分析してもらった。(本記事は、同書の一部を再編集したものです)

高級サービスほど、どこか高飛車でも大繁盛

私たちは「お客様に気を配り、徹底的に尽くすのがサービスだ」と思っている。しかし不思議なことに、高級サービスほど「細やかに気配りし徹底的に尽くす」とは一見正反対だ。

例えば高級すし屋。ミシュラン三つ星獲得の「すきやばし次郎」はオバマ元大統領も訪れるほどの世界的な店だが、店主の小野二郎氏はまさに頑固一徹。ニコリともせずに「おまえ、誰だ?」という声が聞こえそうな顔で出迎えられる。

店内には緊張感が漂い、とてもすしを楽しみながら世間話ができる雰囲気ではない。さらに食べ終わるまで値段もわからない。しかも高い。お値段は「お任せ」コースで4万円(税別)からだ。

高級フレンチもしきたりが多い。まず予約は必須。最低限、ジャケット&革靴着用。Tシャツ、音を立てて食べる、ワインの一気飲み、落としたフォークを自分で拾う、すべてNGである。

高級サービスほど、どこか高飛車な感じがしてしまう。しかし大繁盛なのだ。

現代のマーケティングでは「サービス・マーケティング」がホットで、さまざまな理論が生まれている。しかし従来のサービス・マーケティング理論では、高級サービスでこのように緊張感を強いられ、しきたりも多いという現象が説明できなかった。

次ページすし屋ではとんでもないことが起きていた
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT