高級寿司屋の大将が怖くても許される納得理由 客には「徹底的に尽くすのがいい」の落とし穴

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この謎解きをしているのが、『「闘争」としてのサービス』の著者であり、サービスサイエンスが専門の京都大学・山内裕准教授だ。そこで本書からポイントを紹介したい。

高級サービスは客を試している

山内准教授は店の許可を得て大量のビデオカメラやボイスレコーダーをすし屋にもち込み、店と客のやりとりを録画・録音して分析してみた。すし屋ではこんなやり取りが行われている。

親方「お飲み物はどうしましょうか?」
客 「はい。あ~、蒸しているんで生ビールでぇ……」
親方「生ビール、いきましょう」

ありがちなすし屋の会話だが、よく分析するととんでもないことが起こっているのである。

これは初めての客で、席に座った直後だ。店内にはメニューもなく価格もわからない。なのにすし屋の親父は「飲み物を注文しろ」と催促している。

そして客はというと、わざわざ「蒸しているから」と理由を述べたうえに、さらに「生ビールでぇ……」と語尾を伸ばしている。ビデオで確認すると、チラッと親方の表情をうかがっている。そして親方は「生ビール、いきましょう」と、まるで客が試験に合格したかのように答えている。

ファミリーマートで「ファミチキください」と言う客に、コンビニ店員が「ファミチキ、いきましょう」と返すだろうか? ありえない。そう考えると、このとんでもなさがわかるだろう。

これがすし通の客とのやりとりだと、こんな感じになる。

親方「お飲み物はどうしましょうか?」
客 「ビール」
親方「大瓶と小瓶がございますが」
客 「小瓶で」

客はよどみなく答えている。これは単に注文を聞いているのではない。親方はこの一言で、客を試して見極めているのだ。客がちゃんと答えると合格。親方はその客を特別に注意するようになる。つまりこの質問は、「ウチは当然のように質問に答える客を相手にしている」ということを示しているのだ。

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