ハチミツ少量の「小さなハチ」に引く手あまたの謎 東南アジアに生息「ハリナシミツバチ」に迫る
ハリナシミツバチによる受粉は、自然災害から農園が立ち直るうえでも役に立った。フィリピンは2013年の11月に、規模も被害も過去最大級の台風に見舞われた。台風はフィリピン中部を横断し、多数の農園に傷跡を残した。
「少し経ってからサマール島のアボカド農園へ視察に行った際、私たちは呆然としてしまいました。花は咲いているのに、果実がまったくないのです。これは台風によって、受粉係の昆虫がいなくなってしまったことを物語っていました。バナナなど、受粉係の昆虫がいなくても実を結ぶことのできる果物も存在しますが、多くの農作物の場合はそうではなく、収穫がまったくできない状態でした。ココナッツもそうでした」とセルバンシアさんは語る。島であるがために、受粉係の昆虫が海を越えて自然に島へやってくるには、相当の時間がかかることがわかっていた。
そこで、フィリピン大学のチームはハリナシミツバチのコロニーを現地に持ち込んで、受粉を促した。「1年経たないうちにサマール島へ戻ったところ、無事に受粉が行われるようになっていて、島の人々は本当に喜んでいました」とセルバンシアさん。
ハチ用の牧草地を整備
ここで鍵になったのが、「ハチ用の牧草地」と呼ぶ植物群だ。ハチが好む花をはじめとする植物群を農園に作ることで、ハチが住みやすい環境を作るのだ。モノカルチャーの場合、花が咲いている時は良いが、それ以外の時もハチは食料が必要なわけで、ハチ用の牧草地を整備することにしたのだ。
「新しいハチコロニーを持ち込む前に、コロニーの栄養源を確保することが重要だとわかったので、今ではまずハチ用の牧草地を整備するよう勧めています。特に、フィリピンを含め環太平洋火山帯に位置する国々は、頻繁な自然災害のために農園に住む受粉係がいなくなってしまうことに備えなければなりません」
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