ハチミツ少量の「小さなハチ」に引く手あまたの謎 東南アジアに生息「ハリナシミツバチ」に迫る

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今、新しい収入源としてのポテンシャルが非常に高いのが、ハチが巣に塗る樹脂状の物質「プロポリス」だ。高い抗菌効果があることで知られている。プロポリスは古代から人類に用いられており、エジプトではミイラの防腐剤として使われていた。

ハリナシミツバチはハチミツこそたくさん作らないが、プロポリスは大量生産する。そして、ハチの種類によってプロポリスの含有成分は多種多様だが、フィリピン大学の研究者たちは東京大学との共同研究でヒト培養細胞とマウスで実験を行ったところ、フィリピンのハリナシミツバチのプロポリスに胃がんの腫瘍細胞の増殖を抑える効果が確認できたと2018年に発表した。

世界中からの高まる需要

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「元々プロポリスの市場価値を意識してハリナシミツバチの養蜂を普及させてきたわけではないのですが、分析をして、さまざまな微生物の増殖が抑えられることはわかっていました。それを学会で発表したところ、興味を持つ企業が現れて、現地視察するまでに至ったのです。それでいかに付加価値が高いかがわかるようになりましたし、フィリピンの農家や養蜂家の生活に役立つことを願っています」とセルバンシアさんは言う。

実際、フィリピン国内のプロポリス需要といえば、手作り石鹸を作るためくらいのもので、海外でここまで重宝されることは目から鱗だったとのこと。

「良い話ですが、一定のプロポリス生産量を確約することはしないようにしています。大量生産向けの需要量を、体の小さなハリナシミツバチが作り出すことは難しいでしょうから」

世界からの高まる需要を受けて、今後もフィリピンの養蜂は伸びていくのかもしれない。

五十嵐 杏南 サイエンスライター

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いからし あんな / Anna Ikarashi

1991 年愛知県生まれ。カナダのトロント大学で進化生態学・心理学を専攻(学士)。休学中に半年間在籍した沖縄科学技術大学院大学で執筆活動をはじめる。同大学卒業後、イギリスのインペリアルカレッジロンドンに進学。科学の専門家と非専門家をつなぐことを目的とした学問「サイエンスコミュニケーション」の修士号を取得。同カレッジ在学中に、NHK CosmomediaEurope やBBC でリサーチャーを務める。日本帰国後は京都大学の広報官を務め、2016年11 月からフリーに。2019 年9 月、一般社団法人知識流動システム研究所フェロー就任。

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