ハチミツ少量の「小さなハチ」に引く手あまたの謎 東南アジアに生息「ハリナシミツバチ」に迫る

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セルバンシアさんたちはこうした研究結果をもとに、ハリナシミツバチを使った受粉に関するガイドラインを作ってきた。そのノウハウの一例として、農薬や殺虫剤を散布するタイミングが挙げられる。

「どの植物も、花が一番受粉されやすい時間帯があるのです。そしてそれは、ごく短い時間の場合があります。例えば、マンゴーの場合は朝の8時から10時が最も受粉に適しています。同時に、ハチの餌となる花の蜜が一番多く溜まっている時間帯でもあるので、ハチが食べ物探しに一番勤しんでいる時間帯でもあるのです。すると蜜を求めて花を訪れたハチに花粉が付着し、花から花へと飛んでいく中で受粉されていきます」とセルバンシアさんは言う。

この時間帯に薬剤を散布してしまうと、多くのハチを殺してしまうことになる。散布の時間をハチが食べ物探しをしていない午後などの時間帯にずらすだけでも、ハチを守ることができる。

ハチミツ以外の収入方法を考える人も

ハチプログラムの門を叩く人の多くは、今でも最初はハチミツから収入を得るのを想定して入学してくる。だがこうした受粉のメリットに気づくと、ハチミツ以外の収入方法も考えるようになると言う。

「どうしてフィリピンではハチミツがもっと作れないのか、どうしてフィリピンはハチミツを輸入してばかりなのか、と言われることがありますが、私はその認識を変えたいです。フィリピン原産のミツバチは体が小さいのに、どうして体の大きいセイヨウミツバチと同じ生産量を期待するのでしょうか? 

確かに東南アジアでは年がら年中花が咲いていますが、セイヨウミツバチが花粉を集めるキャノーラや、ユーカリや、アカシアはありません。これらの植物は一度に開花し、ハチたちが一斉に花粉を集めることができますが、ここではそうはいきません。ハチミツも生産量では勝負できませんし、勝負したいと思うべきではありません。そのかわり、私たちのハチが提供してくれる付加価値は多様なものなのです」とセルバンシアさんは言う。

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