ハチミツ少量の「小さなハチ」に引く手あまたの謎 東南アジアに生息「ハリナシミツバチ」に迫る

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当初、ハチプログラムで教鞭をとる研究者はたった5人だったが、次第に生物学の研究者だけではなく、数学や化学や経済学の研究者をも巻き込むことに成功し、今は35人体制だ。特に化学面での研究は、ハリナシミツバチが作った生産物の内容物質を分析する上で、近年重要度を増している。

「ハチミツにシロップを混ぜたり、成分表示を偽装するなど、世界中でハチミツの改ざんが問題になっています。市場に出回っているハチミツの30%ほどが何かしらの改ざんがされていると思われています。そのため、ハリナシミツバチのハチミツも、成分分析をしています」とセルバンシアさんは説明する。

数学の専門家が加わるようになったのはごく最近のことで、ハリナシミツバチの花粉の集め方に関する数学的モデルや、受粉のモデルなどに取り組んでいる。例えば、マンゴー農園1ヘクタールが受粉するのに必要なコロニーの数などを試算することができるのだ。

こうした研究の結果、「数百ヘクタール級の農園ではハリナシミツバチのコロニーが何千個も必要」といった知見を得ることができ、養蜂家が農園にコロニーを納入するきっかけづくりにもなった。

コロニーの質を担保する

そこで重要視しているのが、コロニーの質の担保だ。質とは、コロニーにいるハチの数のことを指す。コロニーが何千個必要と言われても、1つのコロニーにいるハチの数にばらつきがあっては農園も取引がしにくい。

「質の悪いコロニーを提供してもらっては農園に対して不公平で、農業の発展につながりません。そこでコロニーの質の基準を我々が制定しました。ハリナシミツバチの巣は3つの部屋に分かれていますが、少なくとも2つ目の部屋までハチでいっぱいであることを担保することと、総重量が一定の重さを超えることが条件となっています。同じ値段でも、1つ目の部屋しかハチがいないようでは、買い手にとって損ですよね。このように基準作りを進めたことも、ハリナシミツバチによる受粉を簡単に受け入れてもらえた理由の一つです」とセルバンシアさんは言う。

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