独特「日本のコーヒー文化」が世界で注目される訳 喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」
当時のイギリスはピューリタン革命後であり、絶対王政を倒し共和制を打ち立てていました。封建的な身分制度にしばられるのではなく、市民社会を実現しようとしていた時期です。ロンドンの市民たちにとって、身分に関係なくコーヒーを飲みながら政治談議ができる場が求められていました。
当時のイギリスのコーヒーハウスは、入店料1ペニー、コーヒー1杯2ペニーを払いさえすれば、身分・職業に関係なく、富める者も貧しい者も、誰でも入店してそこで交わされている会話に加わることができました。
議論の場としてのコーヒーハウスで、議論の助けになるコーヒーが出される。この組み合わせが功を奏して流行したのです。貧富や身分にかかわらず、全員が同じものを飲んでいるのも、対等な関係を保証するのにプラスに働いたことでしょう。
いまでも企業間のオフィス訪問では、コーヒーが出される機会が多いですが、これも活発な話し合いを促す効果が期待できます。お互いの頭も冴えますし、相手のプレゼン中に居眠りをする心配もありません。豆の種類を訊いたりと会話のタネにすることもできます。アルコールを含まない覚醒飲料として、コーヒーは重宝されているのです。
日本の喫茶店が重視した「美味しいコーヒーを淹れること」
さて、ここで一気に現代日本へと視点を移してみましょう。
日本史上最大の喫茶店ブームは1970年代に起きました。脱サラして喫茶店を開業する人が増え、家族・個人経営の喫茶店が乱立します。1981年にはなんと15万軒を超えるほどにもなりました。2022年におけるコンビニの店舗数が5万7000くらいですから、15万という数字がどれだけすごいかわかるのではないでしょうか。
それだけの数の喫茶店があれば、当然ながら競争になります。他店と差別化するため、店独自の内装やコーヒーの品質にも力を入れるようになりました。コーヒーの抽出に力を入れ、「美味しいコーヒーが飲める店」として人気を得ようとした人たちも少なくありませんでした。ペーパードリップ、ネルドリップ、サイフォンといったそれぞれにこだわった抽出方法で、さまざまな豆を揃え、注文を受けるたびに一杯ずつ淹れるというおもてなしを追求しました。
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