独特「日本のコーヒー文化」が世界で注目される訳 喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」
それまで使われていたのは「カート」という植物の葉でした。いまもエチオピアやイエメンに行くとカートを噛んでいる人たちを見ますが、カートには覚醒作用があり、多幸感や陶酔感をもたらしてくれます。ただ、保存がきかず、鮮度が落ちると効果がなくなるという欠点がありました。
カートに代わるものとして、コーヒーは優れていました。ザブハーニーは現地の人々がコーヒーノキの赤い実を食べていたのを知っていましたし、自分自身、薬として実を煮出したものを飲んでコーヒーの覚醒作用を知っていました。コーヒーはカートと同じような効果がありながら、長期間の輸送や保存に耐えることができます。実を干して乾かせばいいのです。
コーヒーはまずスーフィーの間に広まり、続いてその外にも広がっていきました。15世紀末になると、イスラム世界の中心地、メッカにもコーヒーが到達しています。学者や学生たちが眠気覚ましに利用するだけでなく、単に一般大衆の嗜好品としても飲まれるようになったのです。
イスラム教では基本的にアルコールを禁止していることもあり、代わりの嗜好品として覚醒作用のあるコーヒーが馴染みやすかったのは想像に難くありません。カートが現在も好まれているのも、アルコールが飲めないからでしょう。
カフェの原点はメッカにあった
16世紀初頭になると、コーヒー専門店「カフェハネ」がイスラム教の聖地、メッカに登場します。
アルコール禁止のイスラム世界で、カフェハネは人々の交流の場として機能しました。コーヒーを飲みながら、頭がスッキリした状態で語らうのです。他愛もない日常会話から文学の話や政治談議まで、さまざまな話題が飛び交います。酔っぱらうことのない「バー」のような存在です。またカフェハネはチェス、歌や踊りといった、会話にとどまらないエンターテインメントも提供していました。まさに「バー」ですね。
ただ、当時のカフェハネには、女性は入ることができませんでした。「アルコールなし・男性のみ」がカフェハネのルールです。このルールは、のちにイギリスの「コーヒーハウス」でも受け継がれます。
ヨーロッパでのちに爆発的に広がるコーヒーハウス(カフェ)のモデルは、カフェハネだったわけです。カフェハネは、コーヒーハウスやカフェの原点と言えるでしょう。
また、現在でも繁華街が風紀を乱すと批判されるように、当時はカフェハネも批判を受ける存在でした。厳格なイスラム教徒からすれば、バーの喧騒そのものが愚かしいものだったでしょうし、本来は宗教目的だったコーヒーが世俗化してしまったことにも反感があったようです。また、イスラム主流派からの、スーフィーそのものへの反発もありました。
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