独特「日本のコーヒー文化」が世界で注目される訳 喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」
イエメンにおける最初のコーヒー栽培は西暦575年に遡るとされていますが、現在のような飲み物として利用されている文献が確認できるのは9世紀以降です。ペルシア(現イラン)人の医師であるラーゼス(850~922年)が「バンカム」と記したのが、コーヒーではないかとされているのです。もっとも、バンカムはコーヒーではなかったとする意見も一方にはあり、なんとも言えないところです。
その後、文献にはしばらくコーヒーらしきものが登場しないのですが、15世紀になってようやくイエメンで「コーヒーのカフワ」という飲み物が登場します。
「カフワ」とはもともと、「果実酒」を意味する言葉で、コーヒーだけを指すものではありませんでした。ただ、そのカフワの一種として、コーヒーの種子を煮出した飲み物が生まれたのです。
イエメンのアデンで、イスラム法学者ムハンマド・アッ・ザブハーニーにより発明されたといいます。そしてこれが、コーヒーのイエメン発祥説の根拠です。
なぜイスラム教徒から始まったのか?
ムハンマド・アッ・ザブハーニーは、スーフィーの導師でした。スーフィーとはイスラム教の教派のひとつで、イスラム神秘主義とも呼ばれます。アラビア語で羊毛を意味する「スーフ」に由来しており、俗世を捨てて粗末な衣類のみをまとって暮らす者を指しています。
彼らは、清貧と禁欲に徹し、厳しい修行を自らに課す中で自我を滅却して「内なる神に触れる」という考えを持っています。ちなみに、伝説として紹介したシェーク・オマールも、スーフィーの修行僧です。
スーフィーに特徴的なのは、修行のために独特の儀式を行うこと。一晩中、神への賛美を唱え続けたり、歌い踊ったりすることで神との一体感を高めます。手を広げ、くるくると回転を続ける祈祷で有名です。また、儀式にアヘンや大麻などのドラッグを使う教団もあります。一種のトランス状態になることで神に近づけるという考え方からでしょう。
スーフィーの中でも、メヴレヴィー教団は別名「旋舞教団」と呼ばれるように回転祈祷で有名。写真のような手を広げたポーズのまま回転する。
撮影:パスカル・セバ(1870年)
そんな儀式に使う飲み物として、ムハンマド・アッ・ザブハーニーはコーヒーに注目したのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら