独特「日本のコーヒー文化」が世界で注目される訳 喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」
実はこれがちょっとおもしろいところなのです。歴史的に見るとコーヒーハウスやカフェは人々の交流の場としての機能が重視されてきました。言葉を選ばずに言えば、コーヒー自体の美味しさは二の次だったのです。しかし、日本の喫茶店ブームでは「美味しいコーヒーを淹れること」に注力する店が増えたわけです。
日本独自に花開いた喫茶店文化は、世界のコーヒーにも影響を与えていくことになります。
日本で花開いたドリップコーヒー
現代の世界で主流なのはエスプレッソであり、ヨーロッパの家庭で手軽に楽しめる抽出器具としてはエスプレッソメーカーの「マキネッタ」や「フレンチプレス」が一般的です。
一方、日本ではドリップコーヒーが人気になりました。日本の家庭で淹れるコーヒーといえば、普通、ドリップコーヒーが想起されるでしょう。とくに、粉を入れた紙製のフィルターを専用のドリッパーにセットしてお湯を注ぐ「ペーパードリップ」がもっともポピュラー。ドリップコーヒーの器具メーカーで有名な「ハリオ」も「カリタ」も日本の企業です。
日本独自の喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」です。昔ながらの喫茶店で、ペーパーの代わりに「ネル(フランネル)」という布素材をフィルターとして使っているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。紙なら吸収してしまうコーヒーオイルも抽出されるため、トロリとした質感と甘みが出るとされています。
ネルフィルターは水に浸けて冷蔵庫で保管するなど、管理に手間がかかりますが、日本の喫茶店ではよく見かける抽出方法です。古くからのコーヒー愛好家の中には、家庭でも自分のネルフィルターを「育てて」いる人も少なくありません。しかし、ほかの国でネルドリップを見かけることはほとんどありません。
ネルフィルター。使いこめば使いこむほどにコーヒーの茶色に変色していく。
ネルドリップが手間を愛されるのに対して、手軽さを追求したドリップもあります。一杯分ずつ個包装され、お湯を注ぐだけで手軽にコーヒーを楽しめる「ドリップパック(バッグ)」は日本発の商品です。海外ではほとんど見かけないので、日本を訪れた外国人には驚かれます。
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