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〈書評〉『資産格差の経済史 持ち家と年金が平等を生んだ』『縮む韓国 苦悩のゆくえ』『ドイツ人の時間の使い方』

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『資産格差の経済史 持ち家と年金が平等を生んだ』

・『縮む韓国 苦悩のゆくえ 超少子高齢化、移民、一極集中』

・『9割捨てて成果と自由を手に入れる ドイツ人の時間の使い方』

『資産格差の経済史 持ち家と年金が平等を生んだ』ダニエル・ヴァルデンストロム 著
『資産格差の経済史 持ち家と年金が平等を生んだ』ダニエル・ヴァルデンストロム 著/立木 勝 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・神戸大学教授 砂原庸介

現代社会をさまざまな不確実性が覆う中で、不平等の拡大は、私たちに不安といらだちを覚えさせる。いっそ戦争のような破壊的な活動が生じれば平等が多少なりとも回復されるのに……という投げやりな感覚は、社会の脅威ともなりかねない。

歴史的データに見る富の平等化 要因は住宅取得と積立型年金

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その感覚に呼応するかのように、近年注目された経済学者の主張では、資本主義社会は基本的に不平等化へ向かう傾向があることが論じられる。経済成長率が資本の利益率より高かった世界的な高度経済成長期は例外で、その例外的時代が生じた重要なきっかけが戦争による破壊と、強い──総力戦を行うような──政府が可能にした累進課税だ、というストーリーが続く。

対して本書の主張は、平等化は最富裕層の富が戦争で毀損されたからではなく、大衆の富の蓄積が大きく進んだからであるというものだ。100年前と比べて世界はずっと豊かになり、富の集中度が低下し、民主化が進んでいる。著者は先行研究で使われたデータを再検討し、その改訂版を利用しながら、丁寧に自身の主張を裏付けていく。

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