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独特「日本のコーヒー文化」が世界で注目される訳 喫茶店文化の中で進化したのが「ネルドリップ」

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  • 井崎 英典 第15代ワールド・バリスタ・チャンピオン、QAHWA代表取締役社長
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長らく日本独自の文化で、海外には通用しないと見られていたドリップパックですが、2016年以降、アメリカでは「NuZee Inc.」という会社が手掛けるドリップパックが広がっています。この「NuZee Inc.」は日本人がアメリカに渡って創業した企業で、ナスダック上場も果たしました。

ペーパードリップからネルドリップ、ドリップパックまで。ドリップという抽出方法は、日本で花開いたと言っても過言ではないと思います。

ドリップが愛される理由──コーヒーと禅

ドリップコーヒーは、手作業で丁寧に淹れるコーヒーです。お湯を細く注ぎ、蒸らしてコーヒーの成分を充分に引き出します。本抽出も2~3回に分け、時間をかけて抽出していきます。エスプレッソのように短時間で一気に抽出する方法とは全然違うわけです。これが日本にはフィットしたのでしょう。

私は、ドリップコーヒーには茶道や禅に通じるところがあると思っています。ドリップでコーヒーを淹れる動きには、儀式的な要素を感じることができるからです。飲む前にゆっくりと決まった動きをすることで、心が落ち着き、目の前のものに集中できるのです。

スーフィーの儀式での使用、コーヒーハウスでの自由闊達な議論などの歴史を見ても、コーヒーの本質的な価値は「精神の解放」にありました。日本のドリップ式コーヒーは、カフェインの覚醒作用に加えて、面倒な手順を追うことで精神の解放に到達できる貴重な体験だと考えています。

イスラム教がコーヒーを生んだのと同様、日本においては人々の内なる心にあった禅の精神がコーヒーと結びついたというのが私の見解です。職人気質を持つ純喫茶のマスターが嗜むには、ドリップ式がうってつけだったのです。

アメリカ発の「サードウェーブ」と呼ばれるようなコーヒーショップらが日本のドリップ式を採用しているのは、本人たちがどう思っているかはさておき、そこに日本独自の美意識を見たというのがあるのではないでしょうか。

「ブルーボトルコーヒー」の創業者、ジェームス・フリーマンは、そんな日本の喫茶文化に感銘を受けたひとりです。ブルーボトルコーヒーの日本進出にあたり、数々の日本の喫茶店を訪れた彼は、一杯ずつ丁寧にドリップする姿に感動しました。そして、新しい店づくりに活かしたといいます。

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【コーヒーを食べる日本人】

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