京都で150年「茶筒の老舗」が世界で支持を集めた訳 「修業」や「非効率」こそが今、世界で強みになる

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150年同じモノづくりを続ける工房、開化堂がつくる茶筒。苦境を乗り越え、世界で知られる存在になれたのはなぜなのでしょうか?
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ますますスピードや効率が求められる昨今、その対極ともいえるあり方で国内外から人気の工房があります。それが京都で約150年続き、ひとりでにスーッとフタが下がる気持ちよさで知られる、手づくり茶筒の老舗「開化堂」です。
開化堂がつくる茶筒は明治時代から変わっていません。それにもかかわらず、なぜ海外でも“推し”の人が現れるほど、評価されるようになったのでしょうか?
モノが売れない今、時代のニーズも茶筒に追い風ではない状況下で、苦境を乗り越え、小さいながらも世界で知られる存在になれた秘訣を著した、開化堂6代目当主八木隆裕氏による『共感と商い』より、「効率に走らないことの重要性」について抜粋、再構成してお届けします。

令和の時代に、明治の茶筒を商う

はじめまして。京都で「開化堂」という茶筒工房の6代目をしている八木隆裕と申します。

私たち開化堂は、1875(明治8)年にブリキの茶筒づくりから始まりました。

茶筒というのは、日本茶の茶葉が入っている円筒形の容器。しっかりと密閉されることで、茶葉の香りを逃がさず、湿気からも守ってくれるもので、私たちのつくるものは装飾もほぼなく、磨き上げた金属の光沢やツヤがそのままに表れている代物です。

この茶筒を、150年近い年月の間、激しい時代の変化の中でも変わらずに、130以上の工程を経て素材を切り出し、加工し、磨き上げて、1つのモノとして手づくりで仕上げていく──。

私たちは、そんなことをなりわいにしてきました。

その過程では、安価で大量生産の茶筒が登場した高度成長期や、ギフト需要が激減して茶筒を卸していた取引先から契約を打ち切られてしまったバブル崩壊期など、商売を畳む寸前まで追い込まれたこともありました。

しかし、自分たちの価値を改めて見つめ直し、見極めていったことで、開化堂の茶筒が持つ世界観や手づくりのモノのよさが伝わり、COCUE(コキュ)さんやユナイテッドアローズさんといったアパレルのお店での取り扱いがスタート。取材やコラボの依頼も舞い込むようになっていきました。

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